アリアが演奏しているのはレクイエム。

相変わらず、魔王城ともいうべき迷路のような作りの城内。


 あたしは奏人という立場を利用、つまり職権乱用

だ。


 奏人という立場がどのくらい権力があって、どこまで融通が効くかわからないけど、思ったよりも奏人の役職というのはかなり融通が、きくかのようだ。


 城内の役人に案内してもらい通路を右へ左へ真っ直ぐ進んだと思ったら微かに響いてくる音色がある。


 魔王城を管理している役人の話しでは、アリア自身もその立場を利用して毎年この時期に人払いさせた挙げ句、誰も近づかないようにとお願いいして大聖堂を貸し切りにしているのだそうだ。


 職権乱用ってやつ?

 あたしも人のこと言えないけど……。



 ととと、話が脱線しかけたゾ?

 話を戻して~と……。



 そして、通路を曲がった瞬間からハッキリと聞こえてくるのは誰かを思うための曲長。


 ラブソングや応援歌の類いではない。

 悲壮感たっぷりの、ゆっくりとした曲長。


この世界独自の曲だろうか? それともアリアの作曲した曲?


 エーデルワイス島に来てからはじめて聴く種類の曲調で現世でのあたしの記憶にない全く知らない曲だけど、その曲に込められと思いやアリアがこの曲に込める思いが伝わってくる。


 


 魔王と血縁を結んだというだけで真っ黒な因縁をつけられ無実の罪をなすりつけられ、長老によって首をはねられた母親への思い。


 

 だけど……。 どこか優しくその母親を慈しみいたわる気持ちも込められ安息を願っているのがわかる。


 そう、レクイエムという種類の曲だ。


 あたしは扉を背に寄りかかってアリアの演奏に耳を傾ける。


 率直な感想をいえば完成されていて素晴らしい曲だ。


 だけどこの曲を演奏しているアリアの感情がダイレクトに表現サレテいることに、あたしは眉間に皺を寄せる。


 この曲の終止符まで黙って聴くつもりだったけどやめた。


 バンッ!、と乾いた音を響かせながら大聖堂に足を踏み入れる。


 アリアの演奏を遮るように靴音を鳴らして侵入。


 「アリア! 違うわ!」


 あたしはアリアの演奏が、間違いである事を指摘しながら一直線にアリアが演奏するピアノのもとへ。


 

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