ヤムリ君お持ち帰りするんだけど、アリアと別行動?

「申し訳ありませんが、今日はこの後用事があるので、ヌードバーには一人で帰ってください。 店主には言付けしてあるから大丈夫です」


 共鳴の塔での演奏を終え、魔王城の城門を潜りアリアは意味深にあたしの目を、見つめて別行動を取るという。


「わかった。 あまり遅くならないようにね」


 アリアはそのまま城門で立ち止まり、あたしはアリアに踵を返して歩く。



 もちろん、アリアに対してあたしが何かやらかしたとかそういったことはない。


 でも、アリアがあたしの背中を痛いくらい見つめているのがわかる。

  

 その場で一度立ち止まり振り向くと、アリアが笑顔で手を振っているのがわかる。


 気のせいかな? 何かあるなら言ってくれてもいいのに……。


 再びアリアに踵を返してスタスタと歩く。

 

 そういえば、この後ヤムリ君を拾ってヌードバーにお持ち帰りするんだっけ?


 廃屋も真っ青のあばら家でピアノの練習をしているヤムリ君。


 あれだけの指先に育てたんだ多分あたしの目に狂いはない。


 ヤムリ君お持ち帰りの件について思案していると大分離れたけど、アリアの視線が痛いくらいに刺ささり続けている。


  再びその場で立ち止まり振り向くと、

  アリアが城門へと入っていく後ろ姿がみえた。

 

 「何か頼みがあるなら言ってくれればいいのに!」


 あれは絶対何かあるにちがいない。 

 女の勘ってやつだ。

 

 とりあえず、ヤムリ君をお持ち帰りする頃には

アリアも帰ってくるだろう……。


 そう自分に言い聞かせて

あたしはヤムリ君の家に向かう。



 かろうじて人が通れる獸道をおりていくと歪な音が聴こえる。  


ーー♪♪~♪♪~♪~ーー


 音色はともかくとして、あたしが演奏したパートを既にマスターしている。

 

歪でカナキリ音じゃなければほぼ完璧。

  あたしの目には狂いはない。

 ヤムリ君は指だけではなく耳も良いみたい。


 これだけの逸材、放っておくなんてできない。



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