ヤムリ-君を応援したい!

「この前までは新しい屋根壁があったんだけどねぇこの前の高波に飲まれちゃったのよ……。」


 と、あたしの予想通りの惨状。

 

 「ヤムリ君にウチに来なさい! って何度もいってるんだけどねぇ。」


 

 どうやらおばさんがヤムリ君の面倒をみているような状態。


  だけど、ヤムリ君は、頑なにクビ振ってそれを許否していたようだ。



「いいわ、ヤムリ君。帰りにもう一度よるからその時に決めてちょうだい。」


 「ヌードバーに来てコレからはあたしたちと練習するか? それともピアノの道を諦るか……」 


 あたしはヤムリ君の人生そのものに選択肢を提示してあげた。





 「でも……どうしてヤムリ君にあんな選択肢を?」


 陽光が頂点に差し掛かり日射しが温かく感じられながら魔王城、正確には共鳴の塔へと向かう。


  「ヤムリ君には凄い才能があると思うの。転んだときもそうだけど指を凄く大事にしてるってこと、うん。 ヤムリ君がどれくらいのレベルかはわからないけど凄く練習していてある程度演奏できるのはわかるの。 多分……、この島内での練習量はンコヒーやラグビーちゃん以上に間違いないわ! だからあたしはヤムリ君に安心してピアノの練習できる場所を提供したいの」


 あたしやアリアと同じようにヤムリ君には節が長くて綺麗な指先を思い出しながら、あたしはアリアと共に共鳴の塔へ入る。 





塔の中のピアノから響く音色に出迎えられるとアリアの表情が消えるのだが、あたしは直ぐにアリアの隣に、座りアリアの演奏に、あわせるように鍵盤に指を乗せて、演奏。


 響いていた音が消失すると同時にあたしとアリアが一つになったかのような感覚。

 一つになる感覚の直前、あたしは何度もピアノを演奏できる事に興奮と歓喜の入り交じる純粋な勘定を抑えながら、ヤムリ君へのメッセージを込めた演奏を届けたいと思っていた。


 だけど、気がつけば演奏も終わり、あたしはアリアと演奏した事をおぼえていなかった。


 ほんのわずかな時間の演奏が終わると、午後の活動が始まる。


  午後の活動は個人宅への指導ではなく島内にあるいくつかの集会所での演奏と指導、一つのピアノ教室みたいな物だと言うアリア。

 集会所での指導があるなら、ヤムリ君やンコヒーラグビーちゃんも、教室に、くれば? とも思ったのだが、アリアによると、午前中の個別指導は特に才能がある人への指導だと言う。



 「俺達のアリア! G線のアリア! アリアちゃん最高!」


 と、が奇声のようながなり声で出迎えられたのは漁港近くの集会所。


 「ねぇアリア、昨日から気になってたんだけとG線って、なんなの?」


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