全ての元凶、頭のおかしいツアーガイドの感謝

こんな人気のないような路地裏で厄介な井戸端会議に巻き込まれ助けを求めようにも……。


 というよりも知ってる顔も名前もないので誰かを呼ぶこともできないでいると、先ほど通った路地から黄色い衣装のヒラヒラがひょっこりと出現。


 「あーら、ツアーガイドの水野エルさんじゃない? ちょっとお話しいいかしら?」


 奥様方が目敏く水野の存在を発見して声をかけあたしとアリアを放り出し水野を取り囲むようにして尋問は開始された。


 話しの内容は前回の転移者を連れて来てから直ぐに居なくなった事、ツシマ?


 誰それ? 私の知らない人なのだろうけど、そんな話しからはじまって水野エルが行っている異世界転移ツアーの事についてのあれこれ、今回のあたしをこのエーデル島に連れて来た理由や経緯を追求している。


 蚊帳の外で聞き耳を立てていると水野エルに同情してしまう不思議な感覚。


……。


 「カノン様、変なところで時間を潰してしまいましたがンコヒーさんのお宅へ行かないとなりません」


 アリアにそっと話しかけられて思い出す。 この後ンコヒーさんとヤムリ君のレッスンだっけ?


あたしは思った。世界広し、それが例え異世界であっても、世間の奥様方は変わらない……。と


 結局のところ、頭のおかしいツアーガイドという新しい火種のおかげで難を逃れる事ができたので幸いだ。

 今回ばかりは頭のおかしいツアーガイド……。 


 災厄の元凶、水野エルに感謝するしかない。


 狭い路地を抜け、人通りの多い広い路地を抜けると


 「おい! 今日から新しい演奏に変わったみたいだけどおまえ聴いたか?」


「もちろん聴いたぜ、昨晩ヌードバーでも聴いたけど、俺達のG線に異世界から来た奏人がコンビを組むって話しみたいだぜ!」


 「カノン……。 アサダチとかいうこの前のノリユキ、ツシマと同じみたいな奴だったぜ」


 「あぁ、あの異世界転移ツアーが連れて来た類いだよな?」


 「ツシマに、比べたら月とスッポン。 直ぐに居なくならないで欲しいよなぁ」


 

あたしと、アリアの話題がそこかしこから耳にしながらも。時おり出てくる、ツシマという名前を気になりつつもアリアの背中を追って対面の路地へと入り込む。


 「ンコヒー様の演奏は先日のコンテストでお聴きになられたのでわかると思いますが、ンコヒー様はちょっと性格がアレなので気をつけてくださいね」

 

 と、あたしはどうやらンコヒーの演奏を聴いた事がおるらしい。

 

 先日のコンテストで演奏されていた何曲かを思いだしながら回想。

 

 ……。

 確かに、ちょっと癖のある演奏だったかしら……。


  「この角を曲がった突き当たり……。」


 と、アリアが言う前にあたしはちょっと抵抗感を覚える。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る