とろけるような感触

不思議な現象だった。


 譜面は相変わらずちんぷんかんぷんで読めたものではないが、アリアの演奏に合わせるように鍵盤の上で指先を踊らせると不思議なことにすぅっと、地鳴りが止む。


 無表情だったアリアの顔に生気が戻ったかのように柔くのがわかる。


 お互いにアイコンタクトが出来るくらいの余裕が生まれ、塔を上る不協和音も耳心地のいい音色へと変わった。


 このピアノが何故、いきなり不協和音のようなチャイムを発したのかはわからない。

  もちろん、この塔がどんな構造をしているかなんてどうでもいい。


 あたしにとって大事なのはピアノに触れられるか?

 演奏できるか? の二択。


 それ以外に関してはどうだっていい。


 鍵盤に指先を這わせ演奏できるだけであたしはなにもいらない。


 共鳴の塔内でアリアとのデュオ、アリアとヌードバーではじめてのデュオをした時の楽しさや気持ちよさがよみがえる。


 

  もっと、もっと……。

 アリアと一つになりたい。


アリアととろけるように一つになって演奏したい。

 あたしは鍵盤の上で指先を踊らせる。




 響き渡る旋律と息遣いを聴きながら、あたしは真っ白になる。


……。

…………。

……。




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