とろけるような感触
不思議な現象だった。
譜面は相変わらずちんぷんかんぷんで読めたものではないが、アリアの演奏に合わせるように鍵盤の上で指先を踊らせると不思議なことにすぅっと、地鳴りが止む。
無表情だったアリアの顔に生気が戻ったかのように柔くのがわかる。
お互いにアイコンタクトが出来るくらいの余裕が生まれ、塔を上る不協和音も耳心地のいい音色へと変わった。
このピアノが何故、いきなり不協和音のようなチャイムを発したのかはわからない。
もちろん、この塔がどんな構造をしているかなんてどうでもいい。
あたしにとって大事なのはピアノに触れられるか?
演奏できるか? の二択。
それ以外に関してはどうだっていい。
鍵盤に指先を這わせ演奏できるだけであたしはなにもいらない。
共鳴の塔内でアリアとのデュオ、アリアとヌードバーではじめてのデュオをした時の楽しさや気持ちよさがよみがえる。
もっと、もっと……。
アリアと一つになりたい。
アリアととろけるように一つになって演奏したい。
あたしは鍵盤の上で指先を踊らせる。
響き渡る旋律と息遣いを聴きながら、あたしは真っ白になる。
……。
…………。
……。
■
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます