奏人の仕事と共鳴の塔の役割
一斉演習とはまたどこかの国の国民行軍のようなちょっとカビ臭い風習をイメージしてしまうのはあたしだけだろうか?
「出稼ぎとして大陸を目指す者や大陸から奏人の選定のためにくる調査員に選ばれるために、島がその支援として1日数回奏人がお手本を演奏します。
そして、それに続いて島民が演奏します」
つまり奏人のアリアは1日数回、この魔王城からお手本として島民の向けて演奏しているということらしい。
もしかして、この魔王城の塔はアリアが演奏するための塔と、その演奏を島に響かせるための機関みたいなものっていう事かしら?
アリアの棒読みの説明を聞き終え塔の入口に脚を踏み入れた瞬間!。
ーーぎぉーんがぁーんごぁーんごぉーん!!!ーー
鼓膜が破れそうな不協和音が塔内に響く。
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
音の
発生源は室内にある一台のグランドピアノ。
耳を塞ぎうずくまると、それだけを確認するのが精一杯だった。
耳を塞いだままよくよく聴くとそれがチャイムの音色だというのがわかる。
鳴り響くチャイムの間隙に救われると、アリアは素知らぬ顔でグランドピアノの前、背もたれのないトムソン椅子に腰かけていた。
チャイムの残響が残る中、アリアは氷のように冷たい表情となり、鍵盤に触れる。
聴いた事のある音色。
確かあたしが水野に連れられてきた時に聴いた曲。
あの時のウェルカムベルと勘違いしたこのチャイムの音色、そしてその後にこうしてこの旋律が流れたのを思い出す。
ウェルカムベルの後のウェルカムソングかと思っていたらまさかの一斉演習の合図……。
今さらながら、このエーデル島に着いた時の事、
この旋律の後に周囲から沢山の演奏が聴こえた事を思い出し全てが繋がる。
そして、アリアは無表情のまま演奏しているのだが、アリアが奏人の役割を嫌がる理由に納得。
塔内に響きわたる音が地鳴りを、響かせるような重低音と恐ろしいほどのボリューム。
塔に入った瞬間から不協和音のチャイムから始まり、大音響の演奏。
確かにこれは堪らない。
だけどあたしは奏人のパートナーとして選ばれた身。
あたしもそれに乗らなければならない。
アリアの隣、トムソン椅子に腰掛けるとあたしも指先を鍵盤に這わせアリアの演奏に合わせる。
このピアノがどれくらいのものかあたしは鍵盤に指を這わせながら確かめる。
アリアの低音パートのセコンドに対してあたしはプリモの高音域を演奏し始める。
このピアノの弦を切らしては流石に悪いので加減を加えて演奏。
…………。
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