昨夜の事がもう広まっているんだけど、唯一の救いは悪い噂ではないということ

『あの頭のおかしいツアーガイドがまた連れてきたみたいでよぉ、今回は結構まともらしいぞ!?』



 『俺達のG線が余所者に乗っ取られるのか?!』


 『イヤ……。 アリアちゃんとデュオさせたら、スゴかったみたいだぞ』


 『そうなのか? G線に並ぶ曲なら聴いてみたいかも!』


 『おまえ聴いてないのかよ?! 今、島中その話題で盛り上がってんだぞ!』


 と……。


アリアについて行くとそこかしこからうわさばなしが聴こえはじめている。


 どこかで何かが起きればそれは瞬く間に広がる。

 

 これは珍しいことではない。

 あたしの元の世界、長野県の諏訪市、あたしの出身地は諏訪市の中のポツンとあるような小さな集落なんだけど……。


 人口の少ない集落だからだろう、噂の広がり方は尋常じゃない。 何かあれば、翌日には集落の噂話しになるのはまちがいない。

 

 せめてのもの救いはそのうわさばなし悪いうわさばなしではないということ。


 もし仮に、これが悪いうわさばなしであるならば、こうしてオモテを歩けなくなるのはいうまでもない。


 

 もちろんそれは人口が多い大都市でも無論なのだが、こういった人口が少ない地域ではオモテを歩けなくなるどころではないことはいうまでもない。



「アリア様、お疲れ様です。」


 魔王城、城門に並ぶ色のない独特な制服をビシッときめた衛兵ならぬ、役員がアリアの挨拶をして迎えいれると、その隣にあたしがいる事に気付き、話しは伺っております。


 と、既にあたしの事は周知されていた。

 

 アリアは微妙な緊張感に包まれながら、固まった表情で生気のない声。


 「これから魔王城から島民に向けての一斉演習が行われます」

 と、棒読み。



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