島民との触れ合い、ヤムリ=アヌス

エーデル島の魔王城は島のほぼ中心にある。


 その魔王城の周辺は城下町のように大通りがあり、通りを挟むように店子が軒を連ねている。


 漁港は海岸沿いにあり、あたしとアリアはその漁港からちょっと向こう側の人目に着かないような脇道からひょっこり現れると

 

 「あ~らアリアちゃんじゃない? 聞いたわよぉ! 今まで独奏だったのがパートナーができたんだってねぇ……。」


 そういいながら、鉢合わせしたのはこの島の住民だろう。


かなり独創的な衣装の恰幅のいいおばちゃんだ。


どうやら昨夜の騒ぎの噂は島内に広まってしまっていたようだ。


 「あっ! おねぇちゃんだ! アリアおねぇちゃ~ん!」

 遠目にアリアの存在に気付いた男の子が駆け出してくる。


 びゅ~ん! とご主人さまを見つけたワンコのように凄い加速的なスピード。


 だけどそのスピードが仇となり、男の子は直前で 「あっ!」 と声をあげ、一瞬その身体が浮かびあがりその勢いのままスライディング!


「いったぁ~い!」


 うぐっ! うぐっ……、びぇぇぇぇ~ん!


 泣き叫びはじめる。

 


それもそうだあの速さで転んで身体をスライディングさせれば脚だけじゃなくお腹も腕も顔面までもスクラッチされるのはあたりまえだ。


 身体を起こした男の子は案の定という感じで身体の、前面を擦りむいていた。


 「ヤムリ君大丈夫?!」


 いち早く動きだしたのはアリアだ。

  ヤムリ君と呼ばれた男の子に手を添える。


 「全く、アヌス家の坊やは慌てん坊だからねぇ」


 と、恰幅のいいおばさんがやれやれと近づくと


  「指先は大丈夫かい?」


 と、ヤムリの心配をする。

フルフルと首を振り、「ぅぐっ、ぅぐ……、指おれちゃったぁぁ~」

 と大げさに騒ぐ。

 

 「ヤムリ君、おねぇちゃんがすぐに治してあげるからね」


 と、ヤムリ君を介助しながら瞳を閉じて、自分の手がヤムリ君の血で汚れるのも構わずアリアは鼻歌交じりの声でゴニョゴニョと呟く。

 

 あたしはそんな事が現実に起こるだなんて信じられなかった。


 アリアの掌から閃光が溢れだすとその光りにかざされた擦りむいた脚やお腹、顔までがキレイさっぱり治っていく……。


 テレビや漫画、ゲームでよくある回復魔法の類い。


  あたしの目はその様子から目を離す事ができなかった。


 「ちょっと……。それって噂に聞く魔法とかなにかなの!?」

 

 自分の声がハッキリと、裏返っているのがわかるほどの声。

 


 

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