本気をだしても弦が切れないピアノ
魔王城でおもいっきり演奏出来て凄く満足だった。
今後、二度と演奏できなくてもいいとも思った。
アリアに案内されてヌードバーでの夕食。 ここで二度目の演奏ができるとは思ってもいなかった。
しかもあたしが本気を出して演奏しても弦が切れないピアノとの邂逅。
こうして二度も本気で演奏する事ができるだけで感無量。
だけど隣の長老によって
その演奏も途中で中断されてしまったんだけど……。
長老の話しで、この島には日本では芸能人と呼ばれる存在の奏人という役職があり、アリアがその役職である。
そして、その役職はなんの取り柄も魅力もないこのエーデル島にとって必要なもの。
海の向こうから必要な物資を調達する1つのカード。
あたしは、アリアがそのカードになるのが嫌であたしにそのカードになって欲しいと思っていた。
だけど、話しはそう簡単には行かない。全ての話しを聴いてしまった長老が無理矢理アリアを奏人という存在に止まらせようとしている。
あたしは長老の話しを聴きながらアリアの演奏に耳を傾けていたんだけど、話しの内容は想像を絶するものだった。
このアップライトピアノはかなり独特な形状をしている。
恐らく、あたしの演奏に耐える事ができたのはこの形状がタネだと思っている。
中身がどうなっているかはわからないけど、あの耐久性と独特な響きはこの中身と外観だろう。
曇りが1つもなく細かい傷も全くないのは、それだけ丁寧に扱われていた証であり、鏡のように写る全てのものが鮮明に映えるのは毎日キチンと磨かれて、キチンと手入れがされている証だ。
譜面が置かれている上部、上前板には奏者であるアリアの白い肌に、赤みがかった黒瞳が映える。
アリアは、譜面台と鍵盤に何度も視線を往復させているが、アリアの演奏には譜面台を見なくても演奏できている余裕が伺える。
上前板に写るアリアの隣、純粋な黒瞳のあたしの顔がうつり込み、アリアと視線が合う。
コクリと僅な頷きだけで意思疎通は完了。
あたしはアリアの右側に座りプリモと呼ばれる高い音、メロディラインの演奏をタイミングバッチリではじめる。
あたしはアリアの演奏を聴いてこの音色に足りない色を足していく。
逆にアリアはセコンドと呼ばれる低音の伴奏だ。
アリアが元から弾いていた曲調を崩さないように指先を鍵盤の上で踊らせるとアリアの指先もあたしに合わせるように踊りはじめる。
盤上でステップを踏むような鍵盤捌きはワルツを思わせる滑らかな動き。
低音、高温が重なったりぶつかり合ったりすると創造を絶する音響は酒場の客全員の視線はやっぱり集中してしまう。
息もタイミングもバッチリ。
メインとなるセコンドのアリアとの演奏はまるで、今まで一緒に練習したかのようだ。
そして、息もピッタリでタイミングを合わせて終止符をうつ。
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