長老の告白
♪~♪♪♪~♪~♪♪
いつからその旋律が始まったのかわからないけど、気がつけばアリアがピアノに座って演奏していた……。
そういえば、アリアに替え玉を頼まれて今までアリアの演奏というのを聴いた事がない。
アリアの演奏がどの程度のものか、そしてこの島の奏人という存在の実力はどの程度なのか、ゆっくりと聴かせてもらう事にする。
低音を中心とした心を揺さぶるようなメロディ。 思わず低音域のクラシックG線上のアリアを思わせる。
アリアの演奏がよく聴こえる席に座って耳を傾けると、重低音の響きが素晴らしいのがわかる。
もしかしたら、アリアがG線と呼ばれるのは低音域での演奏が中心だからという理由?
G線上のアリアをなぞらえてるのかと思った。
「どうじゃ? 異世界からきた奏人よ……。 アリアの演奏もなかなかうまいもんじゃろう?」
と、いつの間にかリバースヘッドの長老が橫にきていた。
「そうですね、アレだけの演奏ができるのならあたしを替え玉にしなくてもよかったんじゃないのかな? と思います」
「そうだろう、そうだろう。アリアの演奏は聴けば誰もが魅了される、この世界で唯一無二の演奏じゃ」
と、笑みを浮かべて説明。
確かにその通り、アリアの重低音は心を掴む響きと迫力があり、その音色に引き込まれるのは確かだ。
「あのカノンはな、魔王の娘で魔王は遠くの海の向こうに逃げていったが、母親とアリアはここに残されたのじゃ。 母親に関してはは処刑させてもらったがのぅ、やはり魔王の娘というレッテルは彼女にとってはつらいものだ。 だから私はカノンを奏者として育てたのじゃ。」
ちょっと待って、カノンが魔王の娘? 話が飛躍しすぎ! それに魔王が海の向こうに逃げて、母親とアリアが残されたという話も初めて聞く。
確かに自分の父親が魔王だったり、悪の組織の黒幕やラスボスの娘だったら、人々から冷たい目で見られるのは当然、心に傷を負うのもわかるけど……。
ただ、この長老は母親を処刑したと言っているけど、それはちょっとやりすぎじやない?
「じゃがのぅ? 父親が魔王だけならまだしも、母親を処刑したのは行き過ぎたかもしれぬなぁ……。 アリアには悪いことをしたと思っているんじゃ。 魔王城での演奏は彼女にとっては重荷なのかのう?」
アリアがあたしを替え玉にした理由はもしかして魔王城での演奏が辛いから?
この長老はアリアの母親を処刑したことに関しては反省? 罪悪感を感じているのは伝わる。
長老が気を遣いアリアを奏人とした事はわかる。
だけど違う。
この異世界に魔王がいてそういう世界だというなら仕方ない……。
なんていうんだろう? どう言葉にしたらいいかわからない。
言葉にはできないけどなんだろう、凄くモヤモヤする。
アリアが演奏している曲を聴きながら腕を組み眉間に、シワを寄せていると、自分が今、凄くウズウズしているのがわかる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます