ずさんな異世界転移ツアー
ユラユラと波の上を浮かぶ渡し舟から青い海からの景色、底が見える青い海、朱や黄色青色の宝石のように瞬く魚に、ヒレを優雅に動かしのんびりと泳ぐ水棲生物。
「ナニアレ……。」
尾が長く巨大な龍を思わせる生き物……。
観たこともない生き物に思わず呟く。
海の中で花のようにキラキラと瞬く大きな珊瑚に神様がこの景色を見事に造りだし、計算され尽くして配置されたような海面から浮き出たいくつもの岩礁。
家族旅行で行った緑っぽく濁った海とは大違い。
旅行番組で紹介されるようなリゾート地の光景にあたしは感動を覚える。
これが旅行……。
圧倒的な景色に心が洗われるかのようだ。
一言でいえば『別世界』
ツアーガイドの水野えるは島内の名所のみの案内だけで 「残念ですが……。このエーデル島にはこれと言った特産品も観光名所もありません」
とか言っていたのを思い出す。
そもそも旅行なんて全く興味がなく家族旅行で県外の海へ行ったりハイチュウランドへ行くくらい。
あとは学校の行事で修学旅行程度だったりする。
日本や海外の小島やリゾート地がどんなものかはあたしにはわからなかったけど、このツアーで旅行の意味を衝撃の初体験!
『決められた場所以外行っては行けませんよ~』
『知らない人にはついて行っては行けませんよ~』
とは、旅行あるあるの一つ。
チャプチャプユラユラと、水野えるに案内された場所以外にあたしはアリアに連れられゴンドラの上。
「改めまして、さっきはキチンと挨拶できなくてごめんなさい。 ワタクシ、アリア、アリアエーデルと申します。」
と……。 丁寧な挨拶から始まり、今回替え玉をやって貰った理由を話してもらった。
「それで、カノン様は異世界ツアーで来た方ですよね?」
あたしは現地人に一瞬にして、転位者であることがバレる。
確かこういった異世界ネタはラノベとかそういうのでは後々バレるというのがお約束のはずなのに一瞬でバレました。
「エールさん……。 いいえ水野える、異世界転位ツアーと称してワタクシ達が知らない世界から転移者を連れて来てはこの世界をぐちゃぐちゃに引っ掻き回している存在です。 ハッキリ言って迷惑です!」
彼女、アリアは水野えるの所業をありありと語る。
「確かにあたしも彼女、水野さんにこの世界に連れて来てもらったけど……。」
「一年前にも彼女は来て一人の男、津嶋岳人を連れてきましたが彼は数日後には行方不明となり今も消息不明……。 その前の年も誰とも知らない人を連れて来ては海の向こう側へと魔王討伐に行ったきりです。」
アリアは水野えるが連れて来た転位者のこれまでの事を話す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます