第9話 人気者になっちゃった

 この1件が起きてから、ヒナは忙しくなった。

 取材やら、面会がひっきりなしだ。

 そして彼女のスマホは今や世界で最重要のデバイスとなった。


不破ふわさん、いつこの現象が起きたんですか?」

「えーと、去年の……」


「不破さん、そのスマホはどこで買ったんですか? 特別なアプリとか入れていませんか?」

「えー、普通のところで、別に何も……」


「旅行先はどうやって決めていたんですか?」

「いや、別に……」


「あなた、未来から来たのでは?」

「アホか!」


 いまや、陽翔はるとはヒナのマネージャである。


「彼女、疲れてるんでそのへんで……」

「あ、ダメですよ! 彼女のスマホには勝手に触らないで下さい!」


 連日続く面会が終るとヒナはぐったりした。


「今日も、疲れたあ」

「お疲れ」

「なんで、みんなおんなじことばかり聞くのかしら。まとめて欲しいよ」

「同感だ」


「今日も写真チェックする?」

「まあ、それだけはやらないとな」

「じゃあ、陽翔よろしく」


 そんな事がしばらく続いて…… ある日。


「ヒナ、今日も写真チェックするぞ」

「よろしく」


 陽翔はもはや日常のルーチンワークとなった作業を鼻歌をならしながら行う。

(もう見飽きちゃったな、ヒナの写真。2週間以上数字は無しだし)


「陽翔ー、ちゃんと見てる~」

 ヒナが離れたところから確認する。


「ああ、問題ないよー」

(ふん、ふん、ふふん。さすがにあんな大きな災害は、もうしばらくは無いだろうな)


なんて陽翔が思ったその時!


「うっ」


笑っている数字が目に飛び込んだ。

いや、数字が笑うことは無いが、絶対に人間をもてあそんでいる。


「ヒナ…… 出たよ」


それを聞いたヒナは叫んだ。

「ぎゃー!」


もう数字はトラウマらしい。

「バカ陽翔! 何で数字出すのよっ」


(いや、出しているの俺じゃないし。バカって呼ばれる覚えもない……)


しかし見ている内に、陽翔はマジで青ざめた。


「ヒナ、この数字超やばい……」


-  2,437 -

-  42,909 -

- 311,238 -


陽翔はるとは数字を見て失神した。

ヒナも数字を見て失神した。

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