第7話 午後0時~2時

 レスキュー部隊が登る準備をしている。

 TV局の報道チームが撮影準備を始めた。

 ヒナは定期的に叫んでいる。


「みなさーん。現時点での想定被害者は1,100人くらいです。この写真見て下さいね」


 ヒナのスマホの写真を陽翔はるとのカメラがアップで映す。このやり方だと数字を皆に見せられる。


 いまや野次馬の数は増え、警察は立入禁止のロープを張り、落下防止ネットをタワーの下部に張り始めた。


 ニュースやワイドショーがこの騒動を取り上げ始めた。コメンテーター達が話している。


「この不破ヒナという女性ですが、特にこれと言った犯罪とか病気とかの経歴は無いですね。連れの男性もそうです」


「しかし、何でこんな事をしているんでしょうか? 誰か彼女のレポート見ました?」


「私、見ました。突拍子もない内容ですが、写真の情報と事実は一致していましたね。偽造かもしれませんが」


 写真の数字だけは後付けしたものだが、実際の表示ときちんと合わせている。


 あと2時間、まだ大半の人は信じていないが、一部の人は不安を感じ始めた。単なるお騒がせにしては、ヒナの訴えはしつこい。


「これからどうなりますかね?」

「レスキューが確保に動くと思われます」


- 1,126 -

- 1,130 -


陽翔はるとっ、あまり人数減らないよー」

「しょうがないよ。誰も逃げてないもん」


 ヒナはまた叫び始めた。

「みんな、あと2時間で災害が起きて千人死ぬんだよ! 逃げてって言っているでしょ! 逃げてえ。東京から離れてー!」


 1時間、ヒナは叫び続けた。

 最初は笑って見ていた群衆も、あまりにしつこく叫ぶヒナに引き始めた。


「あいつ、気がおかしいんじゃないか」

「たぶん何か病気だよ」


 レスキューがタワーを登り始めた。二十人くらいだろうか。報道ヘリが周回している。


 潮目が変わったのは午後2時過ぎだった。

 

「ゴゴゴゴ...」 

 何の前触れもなく、地面が揺れた。

 震度2程度の小さな地震だった。


 薄笑いをしていた群衆も、TVのワイドショーの出演者も顔色が変わった。


「地震?」

「地震だ」


 揺れはすぐに収まった。しかし、不安は収まらなかった。ヒナが叫ぶ。

「ほらー、言ったでしょう。3時に大きな地震か何かが起きるのよ、嘘じゃないってっ」


 民衆の半数が不安にかられ始めた。

「まさか、本当に大きな地震が起きるのか?」


 一部の都民が移動を始めた。さすがにパニックにはならないが、みな地震の怖さは知っている。用心に越したことは無い。


 しかし、違う動きを見せたのは警察とレスキューチームだ。「騒ぎを大きくしやがって。早く引きずり下ろそう」


- 1,109 -

- 1,046 -


 ようやく数字が減り始めた。

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