第5話 都心へ!

 羽田の件から一ヶ月以上が過ぎたんです。

 前にも増して、写真のチェックは二人で念入りにしました。

 絶対に見逃さないぞって。


 去年旅行に行き過ぎました。反省です。

 1年以内に撮った写真が山ほどあるんですよ。

 そしてついに陽翔はるとが見つけました。

 また、出てきちゃったんです。


「ヒナ!! あった。やばいよ~」

「えー? どれ?」

「これ、この写真!」


 - 9 -

 

 陽翔が指示した写真は昨年の3月に東京都心で撮ったものだった。

 しかもいきなり「9」だ。


 写真の中で微笑むヒナの姿が皮肉にも可愛い。

 しかし、その可愛い足元で、悪魔の数字がカウントアップしていく。


- 11 -

- 14 -

- 18 -


「ヒナ、どうする?」

「陽翔、行くよ!」

「どこに? また警察?」

「違う! 写真の場所に決まってるじゃないの。もう誰にも頼らないよ!」


 ヒナの信念は固かった。今度は絶対に犠牲者を出さないんだ!


 写真の場所は商業施設の三階から外に延びている外部通路で、しばしばイベントで多くの人を集めるところだった。数百人はキャパシティーがあるだろう。


 そして、ミニ東京タワーのような10メートルほどの高さのモニュメントが写っている。おそらく1年後の今でもあるはずだ。下からでもよく見える。


 ヒナは陽翔の手を引っ張り、走り、電車に乗り、写真の場所へ急いだ。

 数字の伸びは鈍化するが減るには至らない。


 写真の場所にたどり着いた。

 一帯は写真のままだ。1年前と変わらない。


 数字は?


 ゆっくり増える。なお増え続ける。


「ヒナ、写真の日付は?」

「3月2日!」

「あと1週間か…… どうする? ヒナ」


 ヒナには迷いは無かった。


「陽翔、ここから一番近いホテルを探して。その日まで予約を入れて欲しいの」

「わかった。でも親に連絡とかしてあげないと……」

「自分で適当にやっておくから、陽翔はそんな事考えなくていいよ」


「よし。じゃあ探すよ」

「頼んだわ」


 それから一週間、ホテルでヒナは無口になった。

 あのほんわかした性格のヒナがだ。

 対策を一生懸命考えているみたいだ。


 数字は無情にも増え続ける。

 最近接のホテルにいても増え続ける。

 一日前:


- 1,242 -


- 1,248 -


- 1,254 -


 ヒナは陽翔に話し始めた。

「私、明日作戦があるの。いい? 良く聞いてね……」


 それは、無謀な、でもある意味ヒナらしい作戦だった。

 陽翔はヒナの急激な成長に目を見張るのだった。


「やる時はやるんだ。私だってやれるんだよ!」

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