第15話 生命の危機! 急襲する黒装束の者たち

 ヨハンさんが別邸長と話し込んでいる。屋敷に二人で入っていった。彼らが出てくると、別邸長は外にある小屋の中から、鳥の足に何かを括りつけ数羽放つ。


 ヨハンさんは手に弓を持ち背中に矢をかけていた。どうかしたのかと尋ねると、一応用心のためだと返答する。心配になり大丈夫かというと、私が居るんだ心配しなくてもよいと返される。元近衛隊長の彼の言葉は心強い。


 彼は護衛隊長に何かを伝えている。その後、ユリアの元に行き同じようにしている。


「大丈夫よ。今すぐ出発するわよ。ここはメリーチ家の領地なのよ」


 彼女の声が聞こえてくる。彼は何か説得している様子だである。彼女は護衛隊長を呼びつけ指示をしている。隊長は戻ると、二十人程の部下に出発の準備を急ぐよう命令している。


 私は彼女の元へ駆け寄り、何かあったのかと事情を聞こうとする。


「問題なんてないわ」


 早く準備をするよう言われる。去り際に耳元で、ローレンスたちを動揺させるような行動は、慎むよう諭される。私は急いで準備に取りかかる。


 皆の準備が整うと別邸を出発する。そして、森にさしかかり、その中の道を進んでいる。森の中からカサカサという音がして少し身構える。ヨハンさんを見ると、剣の柄を握り警戒している。


 その中から鳥が飛び立っていった。彼を見る


「取り越し苦労なのだろうか」


 もう少しで森を抜けられそうな所まで差しかかったとき、森の中から十数名の黒装束の者達が、前方に飛び出してくる。その者たちは顔はマスクで隠している。私は突然の出来事に、その場に呆然と立っていることしか出来ない。


 防衛隊の一人に腕を掴まれ引っ張られる。彼らは、すでに防衛体勢を整えており、その中に入れてくれたことに気が付かされる。


 隊長が黒装束の者たちに視線をやっている。


「そこの者ども、道をあけろ」


 しかし、彼らは一向に動く様子をみせない。隊長がその後、数回警告を行っているが全くその場から離れない。隊長とヨハンさんが、その集団から目を離さず会話をしている。


 彼らの会話の内容は、こちらと相手方の人数に差がなく攻撃にうってでるのは危険である。彼らの仲間が潜んでいるかもしれないので、私たちは身動きが取れない状況であるらしい。


 馬車の中からユリアが出てくる。


「なにごとですか?」


 すると、隊長がヨハンに警戒を頼み彼女に報告する。


「客人もいるのです。早く対策を練りなさい」


 彼は持ち場へ戻りヨハンと話し始めた。しばらくすると、隊長が彼に頷くような仕草をする。すると、ヨハンさんが彼女の所に来る。


「お嬢様、私一人でここに残り奴らの警戒にあたります。お嬢様たちは周囲を警戒しつつ、別邸へお戻りになられて下さい」


「あなた一人で大丈夫かしら。兵を何名か残した方がいいんじゃないかしら?」


「お任せ下さい。護衛は一人でも多いほうがよいかと思われます。お嬢様達の身の安全が優先です」


「わかりました。では宜しく頼むわね」


「かしこまりました」


 彼は私の所に来て頬を叩く。彼の表情は険しい。


「しっかりしろ! お嬢様を頼むぞ。君の友人もだ」


 突然のことで、私は驚いたが彼のその眼差しを見る。


「はい」


 私は力強く彼に誓う。彼は私の左肩を力強く叩き激励してくれている。私は大きく頷く。


「アンドゥー! 貴方は私の馬車に乗りなさい。徒歩だと足手まといよ」


 私は彼女に促されに乗る。私たちは彼を残し別邸へ向けて出発する。私は一層と身を引き締める。窓の外を見ながら私は警戒している。私はヨハンさんとの約束を果たさなくてはいけないと再び誓う。そして、私は彼女たちを守り切ってみせるとも誓う。

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