第14話 仕返しと不穏
休日、 私は別邸へ向かっている。ローレンスたちは、彼女が用意させた馬車に乗っている。私は通常通り徒歩である。ヨハンさんが護衛として同行している。
しばらくして森を抜けると、私たちは到着した。少し休憩をとった後、ユリアは二人をテーブルへと招いた。
私は、その様子を彼女の側に立ち窺っている。彼女が飲み物を勧め挨拶を交わしてから、会話がまったく弾んでいない。
一体、彼女は何の目的があり彼らを誘ったのか、私が理解に苦しむほどである。彼らからは話しかけづらいことえお分かっているはずなのに、彼女は茶を飲み進めている。
「ユリア様、ローレンスとクリスティーナは大変緊張しております。お話し差し上げたら如何でしようか?」
彼らに気づかれないか窺いながら、彼女は私に睨みを利かせてくる。
「お話は宜しいんですか?」
彼女は私の方に振り返り、今にも殴りかかってきそうな表情になる。
「そうだわアンドゥー、せっかくお二人に来ていただいているのですから、アナタもどうかしら一緒に?」
「とんでもごさいません、ユリア様。私はお供で参ってますので」
「お二人もそうお思いになりますよね?」
彼らは戸惑っている。彼女の目論見は外れてしまっている。私は必死に笑いをこらえる。
彼女は冷静を装っているが、内心穏やかでないはずである。これ以上は流石に、私は心苦くなる。
「私も出来ることなら、そうさせて頂きたいのですが。旦那様に怒られてしまいます。周りの目もありますので」
すると、彼女は周りの従者に下がるように合図する。
「さぁさぁ、アンドゥー座って」
彼女は自分に彼らに聞きたいことを言ってきて、それを私が質問するという形式の会話を始める。流石に、打ち解けてくると、彼女から彼らに対して話すようになる。
「毎日のように、ローレンスさんことを素晴らしい方だと言っているのよ」
それは紛れもない事実である。しかし、毎日のようにという部分は事実と異なる。彼女が会話を弾ませたいという一心なので、私は訂正はしない。万が一、そんなことをしたら私の体は保たない。
「クリスティーナさんの魔法の等級は、どのくらいなのかしら?」
彼女は照れくさそうにしている。
「私なんて全然です。お恥ずかしいです」
「アンドゥーから、かねがね伺っています。優れた魔法力の持ち主であると」
それついて、私は話したことすら無いはずである。クリスティーナの表情は、明らかに混乱した人のものである。それで、私は咄嗟に話しに割って入る。
「いや、ごめんごめん、君なら、そうじゃないかと話したんだよ」
「あら、そうだったの? 驚いてしまったわ。嬉しいけれど、ユリア様に勘違いさせては駄目よ」
「そうだね。悪かったよ。今後は気を付けるよ」
「そうしてちょうだいね」
ユリアは自分の言葉で察したようだ。
「そうだ、ローレンスさん。私と剣術でお手合わせ願えないかしら」
「ユリア様、申し訳ありません。それは出来ません」
「そうですよ、ユリア様。ローレンスが困ってるじゃないですか」
「ローレンスさん、私、なかなかの腕前ですのよ。これまで、アンドゥーと何百回と対戦して一太刀も受けたことが無いんですよ」
「それは本当かい?」
「まぁ嘘ではないかなぁ」
「機会があれば是非お願いしますね」
彼は返答をはぐらかす。それから、私たちは和やかに会話を続け、昼食を済ませて帰ることになった。
私が帰り支度をしていると、ヨハンさんが仕切りに別邸の周囲を気にしている様子である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます