第13話 招待と思惑
相変わらず、私は彼女の個人レッスンに付き合わされている。彼女は専属の国家剣術士まで雇ってしまっている。彼女の並々ならぬ熱意は、一体どこから湧いてくるのだろうと思う。私は理解に苦しんでいる。
彼女の技術と体力は、著しく向上してきている。ここ一週間、私は彼女にボコボコにやられている。私は正直悔しくて仕方ない。
「満足だわ。今日は、この辺にしといてあげようかしら」
「そうですか」
「アンドゥー、休日は別邸に行くわ。あなたも同行しなさい」
「私は屋敷で使用人としての仕事がありますので、遠慮させてもらいます、ユリア」
「安心なさい。お父様の承諾はとってあるの。まさか断るつもりなの? あなたに宜しく頼むと言ってたわよ」
「わかりましたよ。同行すればいいんですね」
「そうだ、友人も招待しなさいよ」
「どうしてですか?」
「口答えは慎むのよ。誰のおかげで生きてられると思ってるの」
「わかりましたよ。ローレンスを誘ってはみますが、彼にだって予定があります。断られる可能性の方が高いと思いますよ。さすがに無理に連れてこいとは、仰らないですよね」
「そりゃそうよ。私が人に無理強いするなんてことはないわ」
「私は何なんでしょうか?」
「うるさいわよ、アンドゥー。やはりレッスン再開しましょうか?」
「ご自由になさったらいいんじゃないですか?」
「ふてくされるんじゃないわよ。そうだわ! 彼女も誘いなさいよ?」
「クリスティーナ……さんですか?」
「そうよ。なに驚いているのよ」
「それは止めておきましょう」
「どうしてかしら、私には会わせたくない理由でもあるのかしら?」
「そういう訳じゃないですけど、昔からユリアは人と喋らないじゃないか」
「それは共通の話題が無いからよ。彼女は階級こそ違うけど同じ魔法科でしょ! きっと会話も弾むはずよ」
「じゃあ、マチルダ様たちとは会話が弾んでいるんですかね?」
「黙りなさい! 誘うだけ誘ってみなさいよ。絶対よ」
「そうしてみます」
「早く仕事に戻りなさいよ」
学院での昼食時間である。彼らにユリアの命令を伝えないといけない私は、大変憂鬱で彼らに嫌われないか心配でいる。
「実は二人に話があるんだけど、聞いてもらっても良いかな」
「もちろん」
「もちろんよ」
「実はユリア様が今度の休日、二人をメリーチ家の別邸に招待したいと仰っているんだよ。それぞれ予定もあるだろうし無理しなくてもいいからね」
「僕は大丈夫だけど」
「今度の休日、私は特に予定はないわよ」
「ユリア様は無理強いするのを非常に嫌うんだ。別に断っても構わないんだよ。決して機嫌を損ねたりしないよ。ユリア様は非常に心の広いからね」
「どうしたんだい? アンドゥー」
「そうよ、いつもの貴方じゃないみたい」
「確認するけど、本当にいいのかい?」
「どうしたんだい? まるで断って欲しいみたいじゃないか」
「そんなことはないよ」
「喜んでお受けするよ」
「大変、名誉なごとだわ」
「アンドゥー、どうしたんだい? 溜め息なんか付いて」
「いやぁ、二人が来てくれるなんて。休日のことを思うと興奮してしまってね。呼吸を整えていたんだよ」
「そんな状態で今から大丈夫かい」
「アンドゥー、落ち着いてね」
二人は私に優しく微笑みかける。私は後ろめたい気持ちで一杯になっている。
授業が終わり、私はユリアを迎えに行き報告している。彼女は大変満足そうである。その日のことを考える度に、私は憂鬱になっている。私は彼女の狙いは何なんだろうと考えているが、私には全く意図が分からないでいる。
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