第2話 異変と驚愕 魔法が効かなくなった少年アンドゥー

 休日の個人レッスンは、通常であれば昼食を終えてからのはずである。しかし、今日は朝食後に呼び出されいる。それは、私にとって想定外の事である。


 しかし、今日は私にとって大切な日である。これから、私は断るつもりでいる。これは、もちろん初めての事ある。徐々に私の心臓の鼓動は速くなる。すると、彼女が姿を見せる。


「さぁ、始めましょう? アンドゥー」


「申し訳ありません。今の時間でないと駄目でしょうか?」


「アンドゥー! 何を言っているの? 早くなさいよ!」


「お断りさせて頂けないでしょうか?」


「どうしたのかしら? 今まで、そんなこと言ったことなかったじゃない。理由を説明しなさいよ!」


「実は、友人と街へ出かける約束をしてるんです」


「そんなのは、いつでもいいでしょ?」


「今日じゃなきゃ駄目なんです」


「なぜなの?」


「初めて出来た友人との約束だからです」


 今日は私の誕生日である。ちなみに私の拾われた日だそうだ。ご主人様が決めてくれたそうである。彼は私の正確な年齢が分からなかった。それで、ユリアと同じ歳にしたそうだ。


 その事を二人に話したら、祝ってくれるというのである。私は想像もしてなかったので大変嬉しかった。


 それを詳しく言うと、彼女は意地でも認めてくれないに違いない。彼女の性格は、長年の付き合いから理解してるつもりである。それに彼女は私の誕生日なんて知らないと思う。


「駄目よ! アンドゥー」


「どうかお願いします。二人が私のために都合を合わせてくれたんです。いつもであれば午後からのはずです。だから、午前にしたのです。そろそろ出ないと時間に遅れてしまいます」


 彼女は、つま先を地面に打ち付けながら、しばらく考え込んでいる。


「わかったわ。では、一発だけ受けなさい! そうすれば行っても構わないわよ」


 私は早く二人の元へ行きたいので、それを受け入れる。そして、私は定位置につく。彼女は詠唱を始めるが、声の調子が普段より低い。すると、彼女は構えて魔法を放つ。


 ――あれ、いつもと違う。何なんだこれは?


 普段の魔法は赤い。しかし、今日は紫だ。大きさと速さも段違いである。


 ――行かせる気はないということか? でも、必ず受け止め立ち続けなければいけない。絶対に倒れて気を失ったりするものか! 彼女たちとの約束を果たすために。


 私は、目を閉じて体中の神経を研ぎ澄ませている。そして、右手で彼女の魔法を受け止める。いつもであれば、彼女は前回より少し威力を上げて放つ。 


 しかし、今回の魔法は今までの比ではない。これまで、私は幾度も受けてきたので感覚でわかる。私は足を踏ん張り堪える。


 ――必ず受け止めてみせる。


 私は凄まじい衝撃を感じてる。次第に呼吸が荒くなる。こういう時こそ冷静さを忘れてはいけないと自身に言い聞かせる。そして、ゆっくりと私は心を落ち着かせる。


 ――よし受けきったぞ。でも何かが、おかしいな


 体に痛みを感じない。ゆっくり目を開け体を確認し始める。服の右袖は破れているが体自体に傷はない。私は体の内部に損傷を受けたのかも思ったが、そうでもないようで痛みはない。


「アンドゥー!あなた何したの? あり得ないわよ!! こんなことは」


 私が彼女の顔を見ると、彼女の目が見開いている。彼女が明らかに動揺しているのが見てとれる。彼女は肩で息をしている。はやり、全力だったのだろう。しばらく見つめ合い、私たちは徐々に落ち着きを取り戻してきた。


「分かりません。行ってもよろしいですよね?」


「ちょっと待ちなさい。話があるの。それが済んだら行っても良いから」


 彼女は両手を背中に隠し、ゆっくりと近づいてくる。


 ――彼女のことだ。何か企んでいるに違いない。


「約束は守りました。それでは行かせてもらいます」


 私は彼女に背を向け、全速力で走り出す。私は追ってこないか心配になり、振り返ってみる。彼女は何かを投げつけているようである。

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