日常2-1 プレゼント

 ※このシリーズ『日常』は、第一部第二章第18.6話終了後を想定した、ストーリーと直接的なかかわりがない、いわゆる外伝的なものです。多少登場人物の時系列的におかしいところがあるかもしれませんが、平行世界線として見てください。



*****



―――ある日の夜。


『なー』

『誰かいる?』


『いるけど』

『泰河どしたの』


『お、こーた』

(『やっほー』とトラが手を振るスタンプ)

『いとこへのプレゼント何がいいと思う?』


『いとこって、あの女の子?』

『前写真で見せてきた』


『そ』

『誕生日パーティーをうちでやるらしくて、せっかくだから用意しようと思って』


『だとしたら人選ミス』

『誰かにプレゼントを贈ることなんてないし』


『だって徳松さんに誕生日プレゼントあげてただろ?』


『それは去年の話』

『あんなに年齢差あるのに参考になるの?』


『ちょっと』

『二人とも個人チャットでやってくんない?』

『通知がうるさいんだけど』


『ごめん藍野さん』

(土下座で地面を突き破る将軍のスタンプ)


『光里は何がいいと思う?』

『前話したの子へのプレゼント』


『んー』

『まだ幼稚園児になったばかりでしょ?』

『ぬいぐるみがいいんじゃない?』


『ぬいぐるみってどんなぬいぐるみだよ』

『最近の幼稚園児の流行とかわからないし』




―――十分後。


『あのー』

『光里さん?』


『催促すんな』

『今妹に聞いてたから』

『少なくとも小学生の間では今セイウチブームなんだって』


『セイウチ?』

『あのセイウチ?』


『それ以外に何があるんだよ』

『なんでもセイウチがゴロゴロする動画が流行ってるんだって』


『セイウチ』

(恐ろしい剣幕でこちらを見つめる、どアップのセイウチのスタンプ)


『お』

『大間さん知ってるの?』

『っていうかすごいスタンプ(笑)』


『うん』

『猫の動画に流れてくる』

『結構かわいい』


『じゃあセイウチがよさそうだな』


『待って』

『やっぱり猫おすすめ』


『それは真心が欲しいやつじゃないの』

『去年の誕生日プレゼントでちっちゃいの買ってあげたでしょ』


『だって猫はみんな好きでしょ』

『いとこの子もそのはず』


『あの……大間さん』

『言いにくいんだけど、いとこの子猫アレルギー』


『え』


『ごめん。だからセイウチにする』


(『ガーン』と黒猫がそっぽを向いているスタンプ)


『ちょっと』

『四人とも通知うるさい』

『塾から帰ってきたら通知五十件超えてるってとんでもないよ』


『ごめんまどか』

『もう話終わったから』


『まあ別にいいよ』

『泰河くんは結構おしゃべりだからねー』

『で、何の話してたの?』


『スクロールして見たら?』


『うわ』

『みっちゃんひどい』


『いや正論でしょ』


『めんどくさいの』


『それが一番ひどいだろ……』

(トラが手で隠せない程の、滝の様な涙を流しているスタンプ)

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