第24.8話
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「待って。私も、行く」
「……え?」
俺が教室を離れようとした時、後ろから呼び止めたのは雪だった。
「雪、大丈夫。別に先生に頼まれたこととかじゃないから」
「ううん。私も行く」
「雪……」
何気ないように振る舞っているつもりだったけど、案外皆に心配をかけていたのかもしれないな。一回小学校で経験をしたつもりになっていたけど、そもそもその時の洸太郎との関係値はそこまで深いものではなかった。
もう一度雪の顔を見る。本気の目をしているのはわかった。でも、あまり多くの人を巻き込みたくはない。
「でも、ごめん。これは俺がやらないといけないことなんだ」
「でも」
「それに、あんまり広げたくない」
俺は教室の出口の真ん前に立ち、目を逸らす。
あまりにもまっすぐすぎる目に、つい弱音が出てしまうような気がしたから。
友達を部外者としているような発言は反省しなきゃいけないけど、それは今じゃない。人のフォローができるほど、俺には余裕がない。
「……私が知ったらまずいの?」
「そういうわけじゃ」
「じゃあ、行く」
「ちょっと」
「泰河、今から……って、何やってんの?」
強引に俺の脇を通って廊下に出た雪と、ちょうど俺を呼びに来た光里が鉢合わせてしまった。
「光里……」
「泰河、雪が通ろうとしてるでしょ。じゃーま」
「誰が図体でかいって? でかいのは背だけだろ」
「声も十分でかいわ」
「まあまあ二人とも落ち着いて。光里も今からどこか行くの?」
「え? まあ、そんなところ」
「私も連れてって」
「連れてって、って、泰河どうすんの?」
「はぁ……」
もうどうしようもないか。
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