第13.4話

「……で、こーたが帰っている最中に、塾帰りでソフトを俺の家に忘れて取りに戻る貞治と出くわして、自分も忘れたから一緒にここまで戻ってきた、と」


「……はい」


「本当にごめん。二人だったらこの時間までやってるかもって思って」


 僕と貞治はすでに寝巻に着替え終え、しっとりした髪を首掛けタオルで拭いている泰河を前に、肩をすくめて立っていた。まさに事の顛末は全て泰河の説明通りで、忘れ物に気づいた僕は、同志と共に踵を返して戻ってきたのだ。

 小学校から近しい関係にある僕たちも、家自体は近いものの道の都合上かなり遠回りをしてこないと意いけない。なぜか踏切を二つ通った後に駅の高架をくぐり、それから少し歩いて到着する。ちなみに、駅の近くに小学校と中学校、あと庵治さんいる喫茶店がある。


「お前らあれほど忘れるなと言ったろ。夏だからシャワーだけで済ませていたから早く出てこれたけど、冬だったらそうはいかなかったぞ」


「泰河、長風呂派だもんね」


「そ。風呂にゆっくり浸かってリラックスしている間にインターホンが鳴った時の落胆はもうとんでもないし」


「ごめん。次からは気を付けるから。じゃあ」


 貞治は何回目かわからない平謝りをして、泰河に細めた目で訴えられるのをよそにそそくさと帰っていった。


「僕も帰る」


「こーたが忘れるのって結構珍しくない?」


「……弘法にも筆の誤り、ってやつ?」


「やかましいわ素人」


 ツッコミの勢いで飛ばされるように、僕は帰り道に放り出された。

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