第1.2話

「なあ、お前やっぱり今日なんかあっただろ」


 二人でオンライン格闘ゲームをしていると、通話先の友人から唐突にその話題を切り出された。


「まあ、なかったと言えば嘘になるけど」


「別に言いたくなければいいけど」


「じゃあなんで聞いたんだよ」


「気になったから」


「それは言って欲しいのアピールでいい?」


「まあ、うん」


「なんだそりゃ」


 くろころの秘密を守り切るのに夢中で、格闘ゲームの中のキャラクターは常に劣勢だ。


「よしっ」


「うわ、それ当たり判定おかしいだろ」


「ふふん……って、やばっ」


「よっしゃ」


 なんとか体勢を整えて、カウンターから不利状況を打破した。でも。


「……」


 ハメ技でノックアウトされた。


「お前、マジでやばいぞ」


「たまにやりたくなるじゃん?」


 ポコン、とチャットが来る。


「はぁ……お、他の連中もくるってさ」


「僕の所にも来た。じゃあいつもので待つか」


「そうだな。あいつらも格ゲーしたらいいんだけどな」


「それずっと言ってない?」


 通話越しで友人が笑う声が聞こえ、思わずこちらも口角が上がる。

 ポコン、と新たなメッセージが通知され、僕は格ゲーのソフトを修了した。

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