第11.2話

―――終業式当日の放課後、昼食にて。



「……なあ泰河」


「何?」


「あいつ、よく話してるけど誰だっけ」


 首が隠れるほどの長髪の男子が、先ほどの来客について尋ねている。


「島野洸太郎。俺の小学校からの親友」


「へえ、前からあんな感じなん?」


 坊主頭がデリカシーをどこかにやったような発言をする。


「あんな感じ、ねえ……」


「違ったん?」


「まあ、昔から優しかったけどな。正直俺が話すようになった時はもっと……なんていうか、明るかった、かも」


 言葉を選びきれない歯がゆさを感じながら、泰河は自信なさげに答えている。


「あいつは俺らのこと、どう思ってるんだろうな」


「どうって?」


「お前が取られて嫌な気分になってる、とか?」


「違うし」


 つんつん頭のからかいを泰河は手で払いのける。


「ただ、多分だけど……」


 言い淀んだ泰河の言葉の続きを、三人は固唾をのんで待っている。


「……気まずいだけなんだと思う」


「…………なんじゃそりゃ」


 三人は口をそろえてリアクションを取る。


「いや、気まずいってどういうこと? たしかあいつが初めて来たとき、俺たち自己紹介したよな」


「あれ、したっけ?」


「お前適当過ぎだろ」


 つんつん頭は長髪の男子の頭を叩いてツッコむ。


「あいつ、結構人見知り激しくなったから、多分初対面の相手と話すのに精いっぱいだったんだと思う。だから、悪く思わないでやってくれ」


「まあ、それはいいけどさ」


 坊主頭はいち早くご飯を食べ終え、慌てて部活カバンを肩にかける。


「多分あいつ、野球部の俺もお前らと同じ部活だと思ってるんじゃないん?」


「……それはないだろ」


 髪を伸ばす三人が口をそろえてツッコむのをよそに、坊主頭は出て行った。

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