夏の夜

毎日、それは潜在的に感じていたのだろう。


どうも、私にとってこの日常は、どこかおままごとのように思えて仕方なかった。


パノラマのような感覚。


私の目で、確実に捉えているにも関わらず、私以外の人生を盗み見ているような。


田んぼが広がり、舗装された道が無い地元にて。


私は一人、深夜0時に農道を歩いていた。


四方から、鈴虫の音色が鳴り響く。


左手に持った缶酎ハイ。


喉も乾いていないのに、無理矢理、胃袋に押し込んだ。


この行為でさえ、私ではない私を、ずっと演じなければならないように思えて。


心の奥底から、どうにでもなればいいのにと、自暴自棄ともまた違う感覚になった。


今度こそ、自分の意思で、酒を呑む。


私はずっと、私の本心がわからないままでいる。


ロボットかのような、最近流行りの、サイコパスのような。


全てが嘘で塗り固められたような。


私には確かに、何かを殺めた記憶があるのに。


それさえも思い出せない。

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神のつもりか。 @-ndA0lightsy

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