第4話 塗り替えられて行く
海は琴子の連絡先も家も知らない。まだ3回しか会ったことがない。それでも海にとって琴子はすでに他の友達よりも、大きな存在になっていた。海自身ですら、わかっていなかった海のことをわかってくれていた。
琴子に会いたい気持ちが恋愛感情なのか、ただ自分をわかってくれる存在を求めているだけなのか、わからない。琴子に会えばわかるのだろうか。どちらにしても、やはり琴子に会いたいことに変わりはない。そして海にできることは、土手で待ち続けることしかなかった。
いつの間にか制服は冬服になり、学校では学年が上がり、初めて琴子と会った季節になっていた。
今日も海は土手に座っていた。むせかえる空気が重さを醸し出す。夏が近づいている。
「おーい! 海! 何してんだー? 暇なら遊びに行こーぜー!」
斜面の上から、クラスメイトの何人かが海を見つけて叫んだ。海は振り返ると、明るい笑顔で答えた。
「おー! 行くー。 どこ行んー?」
海は軽い足取りで走り、友達の輪の中に溶け込んで行った。
何年も何百年も変わらず流れ続ける川と、何千年も生まれては消えて行く雲と、変わり続ける生き物たちの踊る色の絵画の中で、人は響き、響かされながら生きている。
巡る季節と、踊る色たちが一人の青年の中の色の意味を塗り替えて行った。
踊る色 山野 樹 @kokoro7272
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