第21話
国防省を後にしたロイはその足で王城へと向かった。
王城までは少し距離がある。本来では馬車で行くべきところであるが農務省はまだ3人体制。全員フル稼働である。
ロイは農務大臣でありながら護衛もつけていない。かなり危険な状況である。
しかし、1人だからこそフットワーク軽く動くことができている。
王城へ着くと直ぐに国王への謁見を申し出る。
そしてこの申し出は受理され、すぐに謁見がかなった。
国王のいる応接室へ行くと丁度よく宰相もいた。
そしてロイはナスタ国防大臣との協議した内容を2人に伝えた。
「国王陛下、宰相、今日は報告があり参りました。」
「ふむ、そうか。話してくれ」
国王は笑顔で応じてくれる。
「実は干ばつ対策が纏まりつつあります。」
「聞いていますよ。国土省と芋を栽培する農地を借入れたそうですね。その件は私から国王にお伝えしております。」
農地の件は宰相が既に報告してくれていた。
「実は他にも動いているものがあります。それは水路とため池です。」
「ほう、また大きな話だな。」
国王が口を開く。
「この水路とため池は全て農業用で整備します。これによって雨が降らなくても水を常時確保できるようにする計画です。」
「なるほど、だがそれだけの規模の計画をこの1年、2年で可能だとは思わない。」
「はい、通常であればかなりの年月がかかります。ですがその点は私にも考えがあり、既に動き始めています。」
「どのようにするのだ?」
国王は聞いてくる。
「国防省の協力を得ます。」
「国防省!なぜ…まさか!」
国王が言おうとする。
すると宰相が口を開く。
「ロイ農務大臣の考えだと、国防軍を動員するということですね。」
「はい、宰相。既にナスタ国防大臣とは話済みですし、ナスタ国防大臣の方から各辺境伯軍の配置移動や外務大臣に辺境伯軍の移動に伴う外交問題対策の協議をしていただくことになっています。」
「ロイ農務大臣、動きが早くて感心しますよ。大事な問題点を抑えていらっしゃる。」
ロイは宰相に褒められる。
「ロイ農務大臣、話はわかった。各大臣同士でしっかりと話ができているのであれば問題は無い。この件は農務省に一任しているしな。」
国王も認めてくれた。
「宰相、これだけの規模の話になる。農務省はできて間もないというのにこの動きの早さだ。農務省の職員を増やさねばならん。各省に人員を農務省に回すよう指示を出してくれ」
「承知致しました。すぐに動きます。」
「国王陛下、宰相ありがとうございます。」
ロイは感謝する。
こうして計画は国王、宰相からも認められ、さらに農務省の人員確保に動いてくれることになった。
ロイにとってまた1歩前進した日になった。
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