第20話

ナスタ国防大臣との挨拶が終わり、ロイはいよいよ本題に入る。


「ナスタ国防大臣、今日訪問したのは国防省にお願いがあり参りました。」


「うん、お願いですか。一体何かな?」


ナスタ国防大臣はニコニコしながら聞いてくる。


「はい、今農務省で進めている干ばつ対策において大規模土木作業を要するのですが、その作業にはたくさんの人を動員しなければなりません。しかし、人を集めるのは大変ですし統制や指揮するのも大変です。」


「なるほど、国防軍の力を借りたい。そういうことだね?」


ナスタ国防大臣、話が早い。すぐに話を理解してくれる。


「その通りです。国防軍というこのマーレ王国を守る軍を土木作業にまわすことはあまりよろしい事では無いと私もわかっています。しかし、今回の干ばつ問題はこの国を大きく揺るがす危機と考えます。国防軍の方々の力を干ばつ対策というこの国の危機から守る事業に協力いただけないでしょうか?」


ロイは熱弁する。

ナスタ国防大臣は考え込む。

3分ほど無言の時間が出来た。

そしてナスタ国防大臣が口を開く。


「ロイ農務大臣。あなたの言いたいことはよく分かりました。しかし、この国を守る国防軍を簡単に動員することはできません。」


「…そうですか…」


「ですが、私もこの干ばつ問題は重大な危機として捉えています。そこで私に考えがあります。」


「考えですか、」


「うん。今から私の考えを話すよ。」


ナスタ国防大臣が考えを話始めた。


「私も国防軍を動員すれば色々とスムーズに行くと思う。でも、このマーレ王国の国防力が作業中大きく損なわれることになる。」


「その通りだと思います。」


「そこで私の考えとして2つあります。1つ目は外交です。このマーレ王国は南を大南洋、北と西と東はそれぞれ他国と接しています。辺境伯家4家はそれぞれ四方を守っていますが、このうち北と東の2カ国は友好国になります。ここはサリス外務大臣に外交面で支えて頂きます。あとは西と南になります。そこに2つ目の考えとして北と東の辺境伯軍を西と南に配備し守りを固め攻められないようにします。南側は海に面しているので実質西の固めを強くすることで対処します。いかがでしょうか?」


ロイに聞いてくる。


「さすがです」


ロイは素直にそう思った。


「国防省・国防大臣としては干ばつ対策は軍事行動には該当しないから僕の裁量でできるし、他の辺境伯家にも話はできる。」


「はい。」


「あとはサリス外務大臣に協力を求めることとかな。それは私から外務省に行って話しておくよ。あと、さすがに国防軍を動かすから早めに国王と宰相に話をしておくことかな。ロイ農務大臣のことは国王と宰相も期待しているからね。干ばつ対策の責任者として話しておく方がいいと思うよ。」


「わかりました。ありがとうございます。」


ナスタ国防大臣はロイが全権任せられているからと言って上を気にせず物事を進めていくのは危険だと忠告してくれた。

何かあった時要らぬ疑いがかからないよう心配してくれたのだろう。


その後国防大臣との会談が終わり、その足でロイは王城へ向かうのであった。

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