第19話

ロイが向かっているのは国防省である。


国防省はこの国の国防軍を管轄する機関である。このマーレ王国には辺境伯家が4家存在する

。それぞれマーレ王国の東西南北の他国との境界のエリアを領地としていて、最前線で守る辺境伯軍を持つことが出来る。国防大臣はこの4家が3年ごとに持ち回りで担当することになっており、現在は北部を守る辺境伯家であるマッツ・フォン・ナスタが担当している。国防大臣の職は国防軍という巨大な組織を統制・指揮する役職であり、実際に軍事行動を起こす場合は国王並びに他の行政機関の大臣の合意が必要となる。また、他の辺境伯家3家が不適格と判断した場合、罷免することもできる。少し特殊な所なのだ。

ちなみに国防軍はおよそ80万人の軍人を抱えている。この国防軍はマーレ王国各地に基地を置き、各地を守っている。


国防省は宰相府から10分ほど歩いた場所にある。石造りの庁舎はまさに質実剛健という言葉がピッタリなほど立派なものである。

当然今回もロイはアポ無し訪問である。

受付に行き、大臣に会えるようにお願いをする。


「農務省から来ました、農務大臣のロイ・フォン・ニルスです。ナスタ国防大臣とお会いしたくて訪問しました。約束はしていません。お会い出来ますか?」


「ロイ農務大臣閣下、お越しいただきありがとうございます。大臣に確認してまいりますのでお待ちください。」


受付嬢は急いで階段を駆け上がり大臣室へ行った。3分ほど待つと受付嬢が戻ってくる。


「ロイ農務大臣、お待たせいたしました。大臣がお会いになるそうです。どうぞこちらへ」


受付嬢はロイを大臣室まで案内をしてくれる。

廊下や階段には軍服を着た軍人がいっぱいだ。


「こちらが大臣室でございます。私はこちらで失礼致します。」


「案内ありがとう。」


ロイがいうと受付嬢は戻っていった。

それを見届けたロイは大臣室をノックする。


「お入りください。」


声が聞こえ、ロイは大臣室に入った。


大臣室に入るとナスタ国防大臣は既に応接用のソファーに腰掛けていた。


「ロイ農務大臣、どうぞ席にお座りください。」


ナスタ国防大臣に座るように言われロイは席に座った。


「ナスタ国防大臣、突然のご訪問にも関わらず、ご対応頂きありがとうございます。」


「いや、別に気にはしていないよ。私も君と話してみたいと思っていたんだ。この前の大臣会議で挨拶できずすまなかった。改めまして今年から国防大臣を務めているマッツ・フォン・ナスタだ。よろしくね。」


ナスタ国防大臣は笑顔で挨拶をしてくれた。

ナスタ国防大臣は20代前半位の若い大臣である。顔をよく背も高い。そのためスタイルも良い。歳が近い為、ロイは安心感を覚える。


「農務大臣のロイ・フォン・ニルスです。若輩者ですがどうぞよろしくお願いいたします。」


ナスタ国防大臣との面会は挨拶から始まった。

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