第18話
サリアが事務次官に就任して2週間がたった。
この間ロイは芋を育てる用地確保の為に国土省と協議をし、広大な農地を借り受けた。
全国の農地に芋を配り栽培させようと当初は思ったが、突然芋を育てろと言っても信じて貰えないかもしれないとの懸念があったからだ。
これと同時にロイはこの国の農業の問題点をテレスと洗い出した。
サリアは用地の視察に出ている。
「テレス、この国の農業の問題点はなんだと思う?」
「うーん、私には思いつきません。今回の干ばつもこの数年の少雨が影響だと聞きますし…」
テレスが言っていることは確かなことである。
ここ数年マーレ王国各地で少雨の傾向にあった。
「そうだね。雨が降っていないというのが大きな原因なんだよね。でもこれって対策もできることなんだ。」
「えっ、そうなんですか!」
テレスはびっくりしている。
「うん、水路と農業用のため池を作ることが大事なんだ。」
ロイの計画は以下の通りである。
まず大規模河川から水路を作り、さらに農業用水路を作って水を流し、水を確保する。
また、ため池をいくつか作り、水路の水を貯められるようにする。
ちなみにため池は前世の世界でも、降水量の少ない地域で実際に行われているものになる。
「なるほど、ロイ農務大臣の考えはわかりました。でもこの規模の事業になると当然お金もかかりますし、人手もいります。財務省、国土省の協力は不可欠になります。幸いロイ農務大臣のお父様は財務大臣、ターナ国土大臣とも良好な関係なので苦労はしないでしょう。ですが人手に関しては…」
テレスも悩む。
人手に関してはなかなか難しい話になる。
しかし、ロイには考えがあった。
「人手、つまり沢山人員を抱えているとこなら一つだけあるよね。」
「えっ、そんなとこ…まさか!」
「うん、そのまさかだよ。行ってくるね。」
ロイはそう言うと部屋を出ていった。
「まさか、あそこに行くなんて…すごいことを考えますね…」
残されたテレスは驚きを隠せない。
そんなことを思っているとサリアが戻ってきた。
「ただいま戻りました。あっ、テレス副大臣、いらっしゃったのですね。そういえば先程、すごい勢いでロイ農務大臣が外に出ていかれましたが?」
サリアはどうやらロイとすれ違ったらしい。
「ロイ農務大臣は人手を求めて出ていかれましたよ。」
「人手を求めてですか…ちなみにどちらに?」
「行政機関で1番人員がいるところってひとつしかありませんよ…」
サリアにヒントを出す。
するとサリアも直ぐに見当がついた。
「えっ、まさか国防省!!」
その様子を見てテレスは無言で頷く。
「ロイ農務大臣にはほんとに驚かされますね」
サリアも驚きを隠せなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。