第14話
商務省は宰相府から歩いて5分ほどの距離にある。かなりの高層建築である。
ロイは中に入り、受付に行く。なぜならアポ取りもしていないし、まだ部下もテレスしかいないため訪問する連絡もできないからだ。
「すいません、農務大臣のロイです。ナリア商務大臣にお会いしたいのですが、」
「ロイ農務大臣ですか!すいません、大臣とのお約束はございますでしょうか?」
「いいえ、約束はありません。ですが取り次いで貰えませんか?」
ロイは受付嬢に頼む。
「お約束がないので保証はできませんが、聞いて参ります。少々お待ちください。」
受付嬢はそう言うと急いで大臣室へと向かっていた。
待つこと10分、受付嬢は戻ってきた。
「ロイ農務大臣、ナリア商務大臣がお会いするとのことですので、どうぞこちらへ」
「はい、どうもありがとう。」
ロイはナリア商務大臣の部屋へと向かった。
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「どうぞ、こちらのお部屋となります。」
「ここまで案内ありがとう。」
案内を終えた受付嬢は戻っていき、ロイは大臣室の部屋をノックする。
「どうぞ」
中からナリア商務大臣の声が聞こえ、ロイは部屋へと入った。
大臣室は執務用の大きな机、周囲には様々な骨董品や美術品が置かれ、中央には応接用のテーブルやソファーが置かれている。
既にナリア商務大臣は応接用のソファーに座って待っていた。
「ロイ農務大臣、いきなりの訪問とは驚いたわ、」
「失礼しました。約束もないのにご対応頂きまして…」
「まぁいいわ、話を聞かせてちょうだい。頼み事があるのでしょ?」
ナリア商務大臣は単刀直入に聞いてくる。
「実は干ばつ対策で取り入れるさつまいもの入手に困っておりまして、ぜひ商務省の流通網を駆使して入手できないかとご相談に参りました。」
「なるほどね。そういうこと。」
ナリア商務大臣は理解した。
商務省はこの国で商売をする時に避けては通れない存在である。なぜなら商務省に商会登録をしなければ売買が出来ないからである。
その為、商会に強い影響力を持つ。
また商務省独自の国営商会もあり、周辺国との強い結び付きも持っている。
「あなたなりに考えたのね。驚いたわ。まだ子供、大臣になったばかりだというのに。」
「ご協力頂けるでしょうか?」
「えぇ、いいわ。」
「ありがとうございます。」
「でも、ひとつ条件があるわ。」
ナリア商務大臣はニヤリと笑い条件を突きつけてきた。
「あなたの将来性を今回買うことにしたわ。そこで芋の優先売買権を商務省が欲しいの。」
「なるほど」
ロイはナリア商務大臣の考えを汲み取る。
商務省としては国営商会で売買をすることで利益を得る。国営商会は当然商務省の管轄で他の機関の影響を受けるものでは無いため、商務省の利益となる。他の機関は財務省からお金が配布されて活動するが、独自の集金力を持つのは商務省だけである。財務省はそれだけ力を持っているため他の機関は頭が上がらない。しかし、独自の集金力を持てば対抗しうる。ナリア商務大臣は今回の件を勝機だと考えたのだ。
「ナリア商務大臣も頭がキレますね。」
「なんの事かしら?」
「いえいえ、なんでもありません。」
「では、芋の件よろしくお願いします。」
「えぇ楽しみにしておきなさい」
こうして商務省の協力を得ることに成功した。
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