第10話

謁見の儀式の次の日。

ロイは疲れていた。何故なら昨日はロイにとって考えもしなかったことが起きたからだ。

大臣就任。しかも、就任と同時にこれから立ち上げなければならない農務省の大臣である。

昨夜はその事で頭がいっぱいであった。政策や人員など考えることがありすぎて、途中で寝落ちしてしまった。結論何も考えていない。


そして今ロイは財務大臣である父、カイルと共に宰相府へと向かっている。

宰相府は王都カリーの東エリア、行政エリアにある。

このマーレ王国の宰相は前世でいう内閣総理大臣みたいなものである。その下に各行政機関が設置され、その長が大臣である。

行政機関は財務省、外務省、商務省、法務省、魔法省、国土省、国防省、内務省、保健省、教育省といった機関がある。そしてこの中に新たに農務省が設置されることになったのだ。


宰相府へ向かう道中、ロイはカイルから大臣の職務について教えてもらった。


「ロイ、お前は農務大臣になったわけだ。つまりこの国の農業関係は全てお前に託されたわけだ。分かるな、」


「はい、お父様。」


「託される、つまり責任もついてくることとなる。それだけ重要な仕事だ。まぁ、最初は分からないこともあると思うが、お前は恵まれている。同じ家に大臣がいる訳だからな。」


「ですね、普通は考えられない状況ですが、」


ロイは苦笑いをした。


そしてもうひとつカイルから大事なことを教わる。


「ロイ、人付き合いには気をつけるのだぞ」


「人付き合いですか…」


「そうだ、これから大臣会議で各大臣と顔を合わせる。特に商務大臣には気をつけることだ。」


「商務大臣ですか…」


「商務大臣はかなりの頑固者、自分が納得できないことに関して、かなり騒ぐし嫌がらせをしてくる様な奴だ。」


「そんな大臣がいるのですね、」


ロイは少し呆れた。


「まぁ、他の大臣達はいい人ばかりだ。あまり気を使う必要も無いだろ。大臣の中にはロイが一度あったことのある人もいる。」


「えっ、一体誰ですか!」


ロイは気になった。知っている人が1人でもいるだけで安心できるからだ。


「いや、今は教えないでおこう。楽しみにしておくことだ。」



カイルはそう言って教えてくれなかった。

そして気づけば宰相府がもう目の前に見えてきていた。

宰相府はとても大きかった。高さは70mくらいはあるだろう。大きなエントランスがあり、そこを多くの人が行き交っていた。

ロイも思わず声を出しそうになった。


ロイとカイルは馬車を降りる。すると宰相府の職員が出迎えてくれる。


「ニルス財務大臣、ロイ農務大臣お待ちしておりました。他の大臣の皆様は既に会議室にお集まりでございます。どうぞこちらへ」


職員が状況を伝えてくれた。

職員の後を追い、宰相府の中を歩く。

宰相府の造りは外から見た時、大きいと分かっていたが、中に入るとより凄さが分かる。

とにかく天井が高いのだ。窮屈さを全く感じない建物である。


すると大きな扉の前で職員が止まる。


「こちらの会議室になります。どうぞお入りください。」


職員がそういうとカイルが口を開いた。


「案内感謝する。さてロイ、いよいよ大臣会議である。気合を入れていくぞ」


「はい、お父様。」


ロイはそう言ってカイルと共に会議室に入るのであった。

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