第9話

なんとロイは突然農務大臣に任命された。

だが、カイルと宰相はあまり驚いていなかった。


「お父様、どうしましょう!農務大臣なんて…できませんよ」


ロイはカイルに助けを求める。

その様子を見た宰相が口を開いた。


「陛下、流石に我々も慣れているので驚きませんが、子供にまでそのようなことを」


「えっ、慣れているって」


宰相の言葉に違和感をロイは感じた。


「ロイ殿、実は陛下の悪いところでもあってな、勢いで物事を決めてしまわれるのだ」


「そうなのですか!」


「うむ、実は私も宰相にと突然任命されたし、そなたの父ニルス財務大臣もなんの根回しもなく突然任命されているのだよ。」


まさかの勢いで物事を決めてしまうのがこのマーレ王国の国王であることをロイは知った。


「宰相よ、私が勢いだけで何も考えていない、そう聞こえるのだが?」


国王もさすがに口を開く。


「いえいえ、そのようなことは申しておりません。その勢いが外れたことは今までないと私も承知しております。」


宰相がフォローする。


「私が王位に就いてから、古い根回しなどといっためんどくさいものは全て辞めたのだよ。その結果、政もやりやすくなったし、国も良い方向に向かっていると実感しておる。」


国王は自信満々に言う。

確かに国王の評価は国民から高いと聞く。


「ですが国王陛下、私はまだ若輩者です。大臣の職は重たいですし、まだニルス公爵家を継いだわけでもありません。他の貴族達が納得しますでしょうか?」


ロイは思ったことをそのままぶつける。


「その事なら気にするでない。私が直々にニルス公爵家次期当主はロイ・フォン・ニルスであるとお墨付きを与える。またこれを国中の人民に知らせることとしよう。宰相すぐにとりかかるように」


「承知致しました。私はここで失礼します。」


そして宰相は急いで部屋を出ていく。

ほんとに勢いがすごい国王である。ロイにはもう逃げ道がなかった。


すると今まで黙っていたカイルが口を開く。


「国王陛下、突然の事ではありましたが、ロイの次期当主としてのお墨付き、また農務大臣任命とニルス公爵家にとって大変嬉しい出来事であります。ありがとうございました。」


カイルが深々と頭を下げる。

その様子を見て父親としてとても嬉しいのだろうとロイは感じた。


「いや、いいのだ。今後ともマーレ王国の為力を貸してくれ。」


国王は優しくカイルに伝える。

カイルと国王の信頼関係も見えた。


「ところでニルス大臣が二人いることになってしまった。農務大臣の方はロイ農務大臣と呼ぶことにする。そして明日は大臣会議を開く。ロイ農務大臣最初の仕事である。よろしく頼むぞ」


「「承知致しました。」」


ロイはカイルが共に返事をする。


こうして会談は無事終了し、ロイの長い一日が終わったのだった。

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