第8話

ロイがカイルと共に部屋に入ると、国王と宰相が部屋にはいた。

ロイは初めて宰相と顔を合わす。

ナリル・フォン・シーサ。マーレ王国宰相である。

シーサ宰相は侯爵であり、ニルス公爵領から西に5日程の距離に領地を持っている。

シーサ宰相は元々博識として知られ、学者としての1面も持つ。このマーレ王国には前世でいう高校にあたる王国学園が王都カリーに置かれており、学園長も兼任している。

この王国学園には12歳になった貴族やお金を持った有力者などの子供たちが通っている。


シーサ宰相は40歳後半位のイケオジである。だが、学者らしくとても真面目そうだ。


「陛下、財務大臣ニルス参上致しました。」


カイルが挨拶をし頭を下げる。ロイはそれを見て頭を下げた。


「よく来てくれた。ロイも一緒か。話はとても深刻である。シーサ宰相、説明をしてやってくれ」


「はい、陛下」


宰相は返事をし、説明を始める。


「ニルス財務大臣、今日呼んだのは子の国の食料問題である。」


「なるほど、例の干ばつの事ですね」


どうやらカイルは少しであるが話の内容を把握しているようだ。


「その通り、いよいよ来年から麦の不作による食糧危機が訪れることになりそうなのだよ。」


シーサ宰相は深刻そうな顔で話す。


「現状、国の備蓄や他国から買うことによって何とかなってはいたが流石にもう耐えることが出来ない状況だ。」


宰相の言葉にカイルの顔も暗くなっていた。

そしてそのような状況にあることを初めて知ったロイは衝撃を受けた。


「ニルス財務大臣よ、何か考えはないか?」


国王が尋ねる。

だがカイルは黙り込む。そんなすぐに答えが出る話ではないからだ。


そんな様子を見て、ロイも問題解決のために考える。ロイは一応前世では農家の息子であり、農業高校に通っていた。色々と考えはじめる。

すると授業でのある一コマを思い出した。


「あ、あの、」


ロイは勇気を振り絞り、この環境の中で声を出した。

それに気づいた宰相が口を開く。


「ロイ殿、何かいい案でも思いついたのですか?」


その言葉に国王とカイルも一斉にロイを見つめる。


「えっと、思いついたのですが、芋はどうでしょうか?」


ロイが思いついたのは芋であった。

農業高校の実習でさつまいもの栽培をしたのがきっかけである。

サツマイモは湿気に弱く、日当たりと水はけがいい土が適している。

やせた土地の方が栽培しやすく、肥料があまり残っていない土地でも栽培できる手軽な野菜であった。


その為、芋類がこの問題に最適な解決策であるとロイは考えたのだ。


「芋であるか、あまりこの国では食べない野菜であるな。」


国王が口にする。

そしてロイは芋の乾燥への強さについて少し話した。


「はい、あまり馴染みのない野菜になります。しかし芋は、乾燥に強く、また一度に大量生産ができて手のかからない野菜になります。」


「なるほど、確かに聞いたことがあります。乾燥地帯で栽培されていると、ロイ殿は博識ですね。」


宰相がロイを褒める。


「陛下、ここはロイ殿の案を試してみるのはいかがでしょうか、」


宰相が国王に進言する。


「宰相、子供の意見を進言してくるとは驚いたな。なぜかな?」


「はい、私はこのロイ殿に可能性を感じました。特に10歳にしてこのような知識を持ち合わせている点に驚きました。今まで出会ったことがありませんし、このような場で発言できるところにも驚いております。」


「なるほどな、確かにそうだ。」


宰相の言葉に国王も納得した。


「では、ロイ・フォン・ニルスに命ずる。ただ今より農務省を立ち上げ、農務大臣に任命する!」


「えーーー」


ロイにとって今日1番の衝撃であった。

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