第4話
Your Own Adventureの正式サービス初日、ボクはユアドにログイン……出来なかった。
実は昨日から熱を出して寝込んでいたのである。今日は土曜日で学校はお休み。その為朝からふう姉とあーちゃんが看病に来てくれていた。
「正式サービス乗り遅れちゃうわね」
「そだねー、ハルちゃんが熱出しちゃったなら、心配でゲームなんてやってらんないもん」
正式サービスのサーバーオープンは正午で、午前中にキャラクタークリエイトが出来るらしいが、二人はボクの看病を優先してくれたらしい。
「…ふう姉……あーちゃん……楽しみにしてたのに、ごめんなのです」
「気にしない気にしない!」
「ゲームよりもハルの方が大切なのだから、気にしなくていいわよ」
しかし、ボクはとっても申し訳なかったので、気にせずゲームをして欲しいと伝える。
「お昼にはお母さんが帰ってくるのです…。だから二人は帰って、ユアドに冒険行くのです…。そしたら、二人から冒険のお話が聞けるのです……」
熱で苦しそうにしながらも、なんとか笑顔を浮かべようとするボクを見て、あーちゃんは胸を押さえ、ふう姉はほんの少し眉尻を下げた。
「そう…、分かったわ。ハルがそう言ってくれるなら、ユアドのお話たくさん出来る様に頑張るわね?」
「ふう姉!?…………うぅー、分かったよぉー、また明日の朝来て、絶対お話するからね!!」
そして、お昼前にお母さんが帰って来て、ふう姉とあーちゃんはユアドに冒険にいった。
翌日の朝、あーちゃんだけがやって来た。
「昨日はね!βの引き継ぎをしたの!!やっぱりユアドはすっっごいわ!ゲームの中の人達も、動物達もまるで本物で、ほんとーに生きてるみたい!!」
あーちゃんは、少し興奮気味に、けれどボクに負担をかけない様、優しく昨日の出来事を語ってくれた。
ユアドではテイムの魔法、従魔術があり、動物や魔物達とお友達になれるらしい。魔物等をサモンする、召喚魔術などもあるが、召喚と送還に魔力がかかるうえ、ずっと召喚していられる訳では無いらしい。だけど餌代なんかは従魔術と違ってかからないらしい。その代わり従魔術はテイムした魔物達とずっと一緒にいられるようだ。
「だったら、ボクは従魔術が良いのです…。ずっと一緒に居られないのは寂しいのです」
あーちゃんの話を聞いて、ボクは従魔術を取得する事に決めたのだった。
昼前にふう姉がやって来て、入れ替わりであーちゃんが帰っていった。
「あーちゃんが言っていたことは本当だったわ。すごいのねユアドって。NPC…いえ、ゲームの中の住人とお友達になれたわ」
ふう姉はNPCをNPCとしてではなく、一人の人間として見ている様だった。
「ゲームでお友達が出来るのです?」
お友達がほとんどいないボクからすれば衝撃だった。
「ボクもユアドならお友達出来るのです?」
そんな事をポロッとこぼしてしまったが、ふう姉はとっても優しい目で、
「ユアドには色々な種族の人たちがいて、中にはハルとそう変わらない背丈の人たちもいたわ。だからきっと…あなたにもお友達、出来るわよ」
そう言って、寝込んでいるボクを撫でてくれたのだった。
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