第3話
「VRMMOなのです?」
今朝は大騒ぎしていた三人であったが、放課後はボクの家に集まっておしゃべりしていた。
「そうよ、知ってるかしら。Your Own Adventureっていうのだけれど」
「略称はユアドだよっ!」
そういえばテレビのCMで見た事ある気がするのです!
「そのゲームがどうかしたのです?」
「実はっ!……ジャジャーン!!これをハルちゃんにプレゼントします!!」
そう言って背後に隠し持っていた紙袋から、チョーカー型VRギアと一つのゲームソフトを取り出し、ボクに差し出してきた。ボクはきょとんとした表情で、そのVRギアとあーちゃん、ふう姉の顔に視線を行ったり来たりさせた。
「ぶ、VRギアってそれなりのお値段したはずなのです!!こ、これ一体どーしたのです!?です!?」
差し出されたチョーカー型のVRギアは、長年の人々の願いに答えるように、数年前に初めて世に生み出された物だ。開発者曰く、『ヘッドギア型?ゴーグル型?ベッド一体型?そんな形でどうやって、脳から身体に流れる電気信号を捕まえればいいんだよ。首元にしておけば、VR[仮想現実]もAR[拡張現実]も両立させられるじゃないか。』とオタクたちのロマンを一蹴したそうだが、チョーカー型はオシャレとしても起用でき、現在、若者の間で人気になっている。
「あーちゃんが、ユアドのβテスターとして当選してねぇ、あーちゃんの分とは別に、VRギアをとユアドのソフトが一つずつ無料で引換出来たのよ」
「もう、ユアドすっっごい楽しかったの!!だからふう姉とハルちゃんと一緒にやりたくて、パパとママがハルちゃんのご両親と共同で、ハルちゃんの誕生日が近いから、プレゼントにって用意してくれたの!!」
「だから、金額は気にしなくていいのよ?」
既にVRギアが発売されて数年経っており、当時は一台で二十万円近くしていたが、今では四万円ほどに落ち着いている。その上でお互いの両親が合同で購入しているため、そこまで大きな費用はかかっていないのである。
それに、この高校生にはとても見えない、純粋な男の子を、目の前の姉妹の両親は、我が子以上に可愛がっている。
「そうなのです?でも…むぅ…」
「もう買っちゃったんだから、ありがたく受け取っておきなさい」
「そーだよ!あたしはハルちゃんとユアドがしたいっ!」
二人に説得されボクは渋々、VRギアを受け取った。
「むぅ…分かったのです。受け取るのです。ありがとなのです。ところで今日はパパさんとママさんはお家にいるのです?」
「二人とも今日はお休みだって言ってたから、家には居ると思うわよ?どうかしたの?」
「じゃあ今からパパさんとママさんに、お礼を言いに行くのです!!……あっ…いきなり行ったらご迷惑なのです?」
ボクはふんっふんっと気合を入れるが、急に行ったら迷惑になるのでは?と悲しげな表情で首を傾げながら、ふう姉とあーちゃんを交互に見た。
「!?」
「気にしないでいいわよー、ママに連絡だけ入れておくわ。すぐに出発でいいのかしら?」
「二人がいいならすぐ行きたいのです!…でも、あーちゃん大丈夫なのです?苦しそうなのです」
先程の悲しげな表情が刺さったのか、あーちゃんは自身の体を抱きしめながら悶絶していた。
「はぁ、放っておいて大丈夫よ、さ、行きましょうかハル」
ふう姉はため息を吐いているが、実はふう姉も内心キュンキュンしていたりする。表情に出さないのでボクは気づいていないけれど。
その後、復活したあーちゃんも一緒に、二人の家に向かった。パパさんとママさんはボクの誕生日に合わせて、お休みをとっていたらしい。後からボクの両親もやって来て、ボクの誕生日祝いをする事になった。どうやら事前に打ち合わせしてあったらしい。パパさんには肩車され、ママさんとあーちゃん、ふう姉には撫で回された。
後日ふう姉の誕生日も二家合同でお祝いしたが、その際もふう姉の誕生日なのに、結局みんなからボクが撫で回されたのである。
「むぅ……解せぬ……」
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