第11話 上司のカレンさん
とある寂れたアーケド商店街の横にある古びた3階建ての雑居ビルのエレベータに乗り、5階のボタンを押す。軽い浮遊感を感じながら上昇するが、俺はこの浮遊感が一番嫌いだ。なんというか、気持ち悪い。
ちなみにジェットコースターの登っていく時が2番目に嫌いだ。なぜなら重い重量のある物体を無理やり頑張って引き上げています感が必死なようで嫌なのだ。
なんてどうでもいい事を考えている間に5階に着いた。目の前のドアを開けて中に入ると、いつものように真っ白な広い室内の真ん中に王様が座るような豪華な装飾が施されたアンティーク調の椅子がある。向かい合うように2人掛ソファが置かれている。
だだっ広い部屋に豪華な社長椅子とソファーの家具2つ。これがこの部屋にある物の全て。俺が所属している‘キラ☆キラ’の事務所なのだが…もう慣れた。
初めは混乱したのだが、俺の上司…絶対的権力者の意向なのだから一番ペーペーの俺に意見する権限などない。
まぁ逆らっても勝てる気が全くしない…口けんかでも物理的にもだ。
そう思いながらゆっくりとソファに腰を下ろすと声がかかった。
「大分早く仕事のキリがついたのだなカナメ。ご苦労さん。」
そう言ってどこからともなく現れた女性が優雅な姿勢で目の前のアンティーク調の椅子に腰をかける。
いつも気配無しに現れるので、びっくりして心臓に悪いので声をかけてから現れてくださいと言っておいたのでそれを守ってくれたのだたろう。
目の前に座って上品に紅茶を飲んでいるのは、俺の上司カレンさんだ。年齢不詳、経歴不明、スリーサイズ不明の謎だらけの見た目は30歳ぐらいの妖艶でグラマラス美女だ。
ミステリアスなアメジスト色をした釣り目気味の目で見つめられると吸い込まれそうになる。そしてあからさまに強調しているグアテマラボディな胸元。いかんいかん、つい中身のおっさんが出てしまった。
「誰がグアテマラボディだ、中央アメリカ北部か! それを言うならグラマラスボディだろ。まさかお主…今のマジボケか?」
「ほんのジョークです…っていうか勝手に心を読まないでくれます?」
「耳が赤いぞ。しょうもないボケを指摘されたからか…ふふふ。」
めっちゃ図星だ。適当なボケを冷静につっこまれる事ほど恥ずかしいことはない。
「いや、そんな事はどうでもいんですよ。それより今回なんでこんな雑魚を俺のような超絶エリート社員にやらせたんですか! こんな下級冒険者達なんか、警察組織のプレイヤー専門治安維持部隊“PRP”で十分でしょうに!」
「自分で超絶エリート社員って…まぁいいけど。その“PRP”が忙しくて手が回らないから、暇な超絶エリート社員カナメに仕事が回ってきたんだろうに。まぁ、めったに上級冒険者で問題を起こす奴などいないから、カナメの出番もあんまり無いわな。というわけでお主の腕が錆びつかんようにわざわざ我が直々に引き受けてやったのだ。ありがとうございますぐらい言っても罰はあたらんぞ、ん?」
「ありがとうございます。」
俺は素直にお礼を言って頭を下げた。
「これっぽっ〜〜ちも腕の錆びを落とす足しにもならないような雑魚を歴史上類を見ないエリート社員カナメに宛がってくれて…ありがとうございます。」
「エリートの定義が分からんが…ふん、嫌みな言い方しよおって。その割にはお主もアイツ達の罰を楽しんでおったくせに。」
「まぁ、楽しかったのは否定はしませんよ。でも贅沢を言えばもっと手ごたえのある極悪人ならなお良かったのですけどね。」
「その時はぜひお主を直々に指名してやるから楽しみにしておけ。
それよりも……何でレベル1の
「…視てたんですか?」
「最初から最後まで全部視てたぞ。もちろんお前が義妹だと嘘をついてた所もな。」
俺に血が繋がっていない妹なんていない。本当は吉田ツヨシが絞め殺したまひろなんていう少女には会った事もない。ただ記録を読んで知っただけだからだ。
だからなぜ俺がわざわざ吉田ツヨシにそんな嘘をついたかというと…
「人間は何でも理屈が必要な生き物なんですよ。死ぬ理屈がね。」
「ふむ…その理屈で嘘ついてやるほど吉田ツヨシは死ぬべき人間だとお主が判断したという事か?」
「あいつは初めての殺人から快楽に酔いしれていました。このまま放置しておけば性的欲求を抑える事が出来ずにこの先何人もの罪のない同じような少女達が被害が出るのが目に見えていたので、例え今現在
「………そうか。お前がそう判断したのなら問題はない。」
別にカレンさんは俺を信頼して俺の判断を認めてくれたわけではない。彼女にとっては全てが些事なのだ。一般人が大量に殺されようが、
もちろん部下である俺の事を含めて全部…彼女は興味など無いのだ。
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