第12話 ナイスバディ

 「んで? カナメ、雷神会はどうなったのだ。」

 「…雷神会の件も、カレンさんが動けばあっという間に終わる屁みたいな案件でしょ! なんで俺にやらすんですか! ナイスバディー!」


 「我も忙しいんだぞ、こう見えても。」

 「いやいや、暇でしょ? 毎日めちゃめちゃ暇してるじゃないですか俺以上に。 ナイスバディー!」


 「…いや、ツッコまんぞ。それで残りの雷神会の報告は?」

 「はぁー、分かりましたよ。手短に報告しますね、手短に… ナイスバディー!」


 「ナイスバディー! ナイスバディー! うるさいわ! 早よ言えや! 確かにナイスバディーだけれどもよ。」

 「ツッコんでますやん! そんなんだからナイスバ…。」

 

 ゴツッ


 殴られた。理不尽に殴られた…まぁ俺がしつこいのが原因なんですけどね。茶番はこれぐらいにして、いい加減手短に報告を済ませるか。


 雷神会は解散した。というより解散させた。全国の雷神会の冒険者プレイヤーは約100人程度だったのだが、そのうちの37名は(住吉支部10名を含む)処分した。更生の余地無しと俺が判断した為。


 そして更生の余地有りとして26名は奴隷落ちさせた。もちろん日本に奴隷制度なんぞは表向き無いのだが、問答無用に魂への契約で縛って罪を償わせている。後悔している彼らには罰を与えたことがむしろ贖罪となるだろう。


 残りの構成員37名は解放した。強制的に力づくで縛られた者や純粋に雷神 榊ジンに憧れて活動していたやつなど真面目な冒険者プレイヤー達だったからな。


 「それで、雷神会のトップ 榊ジンはどうした?」

 「…労いの言葉はないんですか? こちとらず~~と働きっぱなしで今さっき雷神会を解散させて帰ってきたばかりだというのに、幼児虐待ですよ!」


 ゴツッ


 殴られた。理不尽に殴られた…


 「誰が幼児虐待だ! 少年の姿はしているが30歳近いおっさんだろうが!」

 「いてて、そりゃあ中身は29歳のお兄さんですけど…あっ、そうだった! 大人だからカレンさんのナイスバディで優しく労ってもらっても…」



 ゴツッ


 殴られた。理不尽に殴られた…

 

 「ふん、お主の望みどおり体で労ってやったぞ。」

 「いや、ゲンコツは体で払う内に入らないんじゃあ…明らかにパワハラですよ、パワハラ。嘘嘘嘘嘘!ご褒美です、ご褒美! だからそのゲンコツを仕舞って~~~。」


 カレンさんのゲンコツは直接魂に響くから本当に痛んだからやめて欲しい。とっとと報告の続きをするか。


 「榊ジンは今ダンジョンに潜っているみたいなんで後回しにしたんですよ。ほら、俺って美味しいものは最後まで残しておくタイプなんで。」

 「知らん!」


 カレンさんはハッキリとキッパリ言い放った。


 「はいはい、分かりました。今すぐ行けばいいんでしょう行けば…」

 しぶしぶ重い腰をソファーから上げようとしたら

 

 「いや、気が変わった。偶には我が行ってやろう。部下の尻拭いをしてやるのも有能な上司の務めだからな、お主は休んでろ。」


 「誰が尻拭いですか! 俺の仕事に失敗なんて…あっちょっとカレンさん!」


 勝手に話の途中で行ってしまった。全くもう…自由人なんだから。


 俺はだったっ広い白い部屋にポツンと残された。部屋の中央の置かれたたった一つのソファーにドサッと無造作に座りなおして、背もたれに体全体を預け、ふんぞり返って深くため息をついた。


 「はぁーっ、可哀そうに…うちの上司の理不尽さにせいぜい抗ってくれよ、雷神。」


 そう言ってこれから起こる悲劇に、いくら悪人の榊ジンといえども同情を禁じ得ない…

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