第9話 キラ☆キラ
「お前がここに運んできたキャリーケースに切断された死体の一部が詰め込まれていたが…。」
「あ、あれは…ぼ、僕じゃありません。先輩達が…あ、アキラ先輩達が街で攫ってきた女の人を…散々弄んで…。あ、飽きたら殺して。僕が切断処理をしましたけど。えっと。もちろん僕もたまにおこぼれを、も、もらう事もありますが…。」
「成人女性の腕にまぎれて12歳ぐらいの少女の腕もまぎれてたぞ。」
「あ、あれは…そ、そうだハヤトさんが殺した…へぎゅっ」
ばきっ ずざざざざ〜
僕は3mぐらい吹き飛ばされ、地面を転がった。殴られたと気付いた顔の左側もジワジワとした痛みから次第にズキズキと耐え難い痛みへと変わった。
「うううっい、痛いいいいい。」
「お前、何嘘言ってごまかしてるんだ。少女の名前は 田中まひろ 12歳。お前が2日前に首を絞めて殺した少女の名前だよ。支部の浴槽で腕以外のバラした死体も確認済みだ。」
べきっ
「うぎゃあああああ」
少年が地面に着いた僕の左手の上に足を乗せて力を込めた。小指と薬指が軽快な音を立てて折れた。
「少女は塾の帰りに行方が分からなくなって、家族から捜索願が出されていた。」
べききっ
「うあああああ」
左手の残り3本の指が折れて悲鳴を上げた。
「お前の嗜虐心を満たすためだけに、何の罪も無い一般市民を…子供の未来を殺したんだ。」
「ぜー、ぜー、た、確かに殺しました。彼女は…ぼぐがごろじ(殺し)まじだ。そ、それは認めます。だ、だけど…ぼぐは16歳です。ぼぐも未来ある若者ぢゃないんでずが? 警察に自首します。法によって裁かれまず。」
僕は認めた。警察に自首をすれば、未成年の僕は数年少年院に入るだけで出てこれるだろう。こんなところで殺されるよりはマシだ。
べきき
「びょえええ、や、やべでぐだざい、ななんで〜、自首するって。」
今度は右手の人差し指と中指を足で蹴られて折られた。
「は? いまさら自首するって? 未成年だから少年院で数年過ごしてしばらくすれば何事もなかったかのように出てこれるだろう?なんて甘い考えしてたんじゃないのか?」
「うっ、うぐ。」
図星だ。僕はまだ未成年だから1人殺したぐらいでは罪に問われないだろう。
べぎぎぎ
右手の残りの3本を折られて悲鳴をあげる。もうこれで両手すべての指を折られてしまった。その痛みたるや…3階層の兎型の
痛くて気を失いそうだ。だけど気を失ったら僕はそのまま死んでしまうかもしれない。最後まで生きる希望を持って抗うんだ!
「なんの権限があって、あなたはぼぐを傷つけるのだ! 法治国家においてあなたの行為は殺人罪だ! アキラ先輩や僕と一緒だ!」
「くくくくく、ははははは、あーはははははは、ひーひー。」
僕の必死の叫びを聞いて少年は気が狂ったように笑い出した。その姿は僕を嘲笑うような、わざとらしいほど大げさな笑い方だった。
「あー笑った笑った。俺が何者かだって? 権限がないだって?」
少年は今までの笑顔とはうって変わって最初の頃の人形のような無機質な表情で僕に言い放つ。
「お前はそれを知ってるだろ? 思い出せよ、少女の最後の言葉を! そしてその名を口にしてみろ!」
えっ僕がこの少年の名前を知っている? 少女の言葉?
えっ……………………………まさかあの時の。
まだ幼い容姿をした細い首を最初はやさしくいたわるように絞めて、驚きと苦しむ表情を楽しむ。暴れる少女を強引に押さえつけながらも、徐々に徐々に力を込めて締める。そして一時だけ緩める事によって、助かった事による安堵の表情を見て、今この時は僕がこの少女の生死を手にしているのだという全能感に満たされて…満たされて…脳が満たされて…今まで味わった事のない快感を得て
射精した。
今もなお残る手の感触と共に彼女が死の間際に放った言葉を思い出す。
「あっ、あなたにも、きっ…きっと天罰が…くだるわ。」
「××☆××があなたに天罰を…あっあ……」
子供の今際の戯言だと思いその時は歯牙にもかけなかったが…
「××☆××があなたに天罰を…」
まさかそんな…
「××☆××があなたに…」
実在していたのか…
「××☆××が…」
単なる出所の怪しい噂話し程度だと思っていたのに…存在していたのか…
「キラ☆キラ………なのか…。」
「正解!」
少年は満面の笑みで僕に告げた。
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