第4話 アキラ先輩

「いや、待て。やっぱりこいつは俺が殺すわ。」

 アキラ先輩が言う。


 「なんでだよ! 俺がこんなに頼んでるんだから譲ってくれよ。」

 「まぁ、俺は今回アキラに譲ってやってもいいぜ。後で牛丼おごれよな! みそ汁付でな。」


 「こう見えてツヨシは俺の幼馴染っていうのかな。近所でこいつが小さい頃から目をかけて可愛がってきたんだ。だから最後は俺が止めを刺してやるのがケジメってもんだろう?」

 「…分かったよ、ツヨシは譲ってやるよ。その代わり次は絶対に俺に殺らせろよな。」

 「後で牛丼おごれよな! みそ汁付でな。」

 どうやらアキラ先輩が僕を殺すことで話がついたようだ。アキラ先輩なら話せば分かるはずだ。頭でも下げて、奴隷でもいいから殺さないでと懇願すれば…


 「ア、アキラ先輩! 幼馴染で可愛がってくれてたのなら尚更僕を殺さないでください。これからも僕はアキラ先輩の為ならなんだってしますから! アキラ先輩の役に立ってみせますからお願いします!お願いします!お願いします!」

 僕はなりふり構わずアキラ先輩の前で土下座をする。


 そんな僕をしばらく見続けたアキラ先輩が僕に近づき、髪の毛をガッと鷲掴みして顔を上げさせる。目の前には真剣な表情のアキラ先輩と目が合う。大丈夫だ。アキラ先輩なら僕の事を助けてくれる! しばらく真剣に見つめあったまま沈黙の後…


 「だめええええええええええ! くひゃひゃひゃひゃひゃ」

 ひゃはははははと3人揃って醜い顔で僕をあざけ笑い続けた。


 ああ…本当に僕はここで殺されるんだ…どう抗っても僕はもう…。

 

 何をしても揺るがない未来に絶望した僕は全身の力が抜け失禁した。


 「うわぁ汚ねえな、コイツ漏らしてやがる。」

 「ちっ、つまんねえな。絶望しても逃げ出してくれれば狩りが出来たのによう。もう汚ねえからアキラが止め刺してもいいいぜ。」

 ハヤトさんとコウジさんは絶望してぐったりした僕を見て興味を失ったようだった。


 「ツヨシ、今までも俺は色んな奴を殺してきたけど、殺され方にはだいたい3パターンぐらいある。1つめはお前みたいに絶望して諦める奴、2つ目はなんとか逃れようと逃げ出す奴、そして最後の3つめは一矢でも報いる為に抗う奴。」

 アキラ先輩が光を失った僕の目を見てつまんなさそうに話しかけた。


 「まぁ絶望したお前をこのままにしておくのも忍びないから、さっさと殺してやるよ。俺のスキル剛腕でじっく〜〜り、長々とじんわり殺してやるよ。」

 アキラ先輩はそう言うと近くにあった岩を持ち上げた。1mぐらいの大きな岩だ。その岩を頭上まで持ち上げて僕を見下ろす。


 「今からこの岩をお前に振り下ろす…頭が潰れてくれればすぐに死ねるけど、ちょっと頭蓋骨にヒビが入ったりだとか割れたぐらいだとすぐには死ねないな。1日ぐらい苦しんで苦しんで苦しみぬいて死ぬな。長い時で2〜4日ぐらいかかる時もあるな〜。」

 そんな恐ろしい事を言いながらアキラ先輩は嬉しそうにニヤニヤしている。


 「安心しろよツヨシ、お前が小さい時から面倒を見てきてやったんだ。お前の最後は、俺が死ぬその時までじっく〜〜りと、ゆっく〜〜りと観察しながら、そばで看取ってやるからな〜安心して死んでくれよ。くははははははははは。」


 僕は気が狂ったように笑うアキラ先輩の高笑いを聞きながら、せめて早く死ねますようにと願って目をつむった。

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