第五十一話 バンド名そろそろ決めない??
夏合宿も残り二日。
ここで、ある少女が発言した。
「ねぇ、そろそろバンド名決めない?? ずっと『軽音部』でいるわけじゃないんでしょ??」
華澄のこの発言に、他のメンバーはそれぞれの反応を見せた。
鉄郎は、「あ、忘れてた」的な顔をし、それに気づいた遥が呆れた顔をし、他の三人は目に見えてワクワクした顔をした。
そして、華澄は、もう一つ、この夏の大切な行事の提案をする。
「あと、結構いける、って思うから、この夏休みの末くらいに中庭でライブしたい」
わっと、部室内が沸く。
しかし、二年生で生徒会の二人は何か考えていた。
「……バンド名は決めよう。今すぐ。でもなぁ、中庭ライブか」
「てっちゃん、ライブ無理そうなの??」
二年生が渋い顔をするから、一年生はなんだか沸いていたものが一気に萎んでしまう。
「まあ、うちにはこの高校の生徒会長様がいるからまぁ、ライブ許可は出そうなんだがなぁ」
「ちょっと、俺がいつも職権乱用してるみたいな言い方やめてくれない??」
「いや、匠海との件とか結構職権乱用してるぞ、お前」
鉄郎のまどろっこしい言い回しに、いち早くキレたのは、華澄だった。
華澄はまどろっこしい言い方をされるのを嫌う。
特に、自分が提案したことなだけに、はっきりしてほしいのだ。
「てつくん、遥くん。なんか問題があるの?? はっきりしてほしいんだけど」
「いや、機材がな、ライブするにはちょっと心もとないかなって感じなんだよな」
「あー、確かに、あたしもマイクとかちょっと気になってた」
「だろ??」
全員で考えたものの、双子が負担して機材をまるっと買い替える、という案には、双子以外から大ブーイング。「二人にばかり負担かけられるか!!」と四人から怒られ、双子は少し、しゅん……とした。
結局、顧問に相談しようと、職員室に行き、八月末の中庭ライブの件、機材の件を相談してみた。
顧問は頻繁に練習を見に来ていて、この合宿中も差し入れをもって来てくれている、熱心な教師だった。
相談すると、ライブいいねぇ!! 滾るねぇ!! と乗り気で、機材に関しては、自分も少し気になっていたから上に掛け合ってみる、と言ってくれた。
そして、バンド名の件だが。
「もうこれでいいじゃん。『黒猫』。あ、待ち受け俺じゃん」
鉄郎は隣に座る華澄のiPhoneを持ち上げる。
それは黒猫をモチーフにしていて、上部には可愛らしい耳がついている。
ちなみにこれは合宿前に朱香と出かけた時に華澄は黒、朱香は白でお揃いで買ったものだった。
勝手にiPhoneを触った鉄郎には華澄の鉄拳が飛んだが、他のメンバ―も「可愛いからいいんじゃね??」と簡単に決まってしまった。
軽音部、こと、ロックバンド『黒猫』。
これからどんな活躍をするのだろうか。
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