第四十九話 夏合宿!! 五日目!! ③


 彼氏軍団が帰ってきたのは、揃って五時だった。

 三人そろって帰宅し、「その辺で一緒になった」と言う彼氏たち。

 その頃丁度、遥が風呂掃除をして風呂を沸かし、女子二人が夕飯を支度していた。


「華澄」


「??」


「ちょっとこっち来い」


 鉄郎が華澄を手招きし、リビングから、玄関に移動する。

 華澄は全く何事かわからない。


 しかし、鉄郎の手にはバイト先の雑貨屋の紙袋。


「どうしたの??」


「これ、香水のアトマイザー買ってきたからなんかいいのあったら教えて。買ってやるから」


 鉄郎が差し出してきた紙袋には小瓶が五、六個入っていた。

 昨日話していたことを彼は覚えていたのだ。


 でも、出かける前にどんな香りが好みか聞いていくのを忘れていたので、色々な香りの香水のアトマイザー……つまり、お試し用の小瓶をいくつか買って来たようだ。


「あ、りがとう。でも、気に入ったやつあったら自分で買うよ?」


「いや、俺が買ってやりてぇんだよ。おっさんが嬢に貢ぐ気持ちわかるわ。色々してやりてぇ」


 おじさん臭い発言をする鉄郎に華澄はクスクス笑う。


「じゃあ、てつくんがおじさんになったら、あたしなんて放置で女子高生とかキャバ嬢に貢ぐのかな?」


 笑いながらも寂しそうな華澄。

 そんな華澄の唇を、鉄郎は自分のそれで軽く塞ぐ。


「ん……、なに??」


「俺はお前意外に貢ぐ気はないんだけど。あと、俺がおっさんになってもお前は俺といてくれんの?」


 勝ち誇ったような鉄郎の言葉に、華澄は、ボっと顔を赤くする。

 でも、つい出てしまったけど、ずっと一緒にいたいのは、本当だ。


「あ、たしは、ずっと一緒がいい」


「そうだな。離さねぇから」


 もう一度キスしてから、華澄を自分の腕の中に閉じ込める鉄郎。


 離さない。

 離したくない。

 離さないで。

 離すことなんてしないで。


「もっと、いちゃいちゃしろ~!!」


「あ!! 朱香ちゃん!! おっぱいが!!」


「わわ!! 元貴くん体重かけないで!!」


「ちょ、みんな重いから!! うわぁ!!」


 どさどさどさどさ!!

 リビングと玄関を隔てるドアから大きな物音。


「「?!」」


 そこには、上から、朱香、元貴、遥、匠海の順でドミノ倒しになっている四人がいた。

 どうやら、先輩後輩カップルの逢瀬を覗いていたらしい。


「「「「えへへへへへへ……」」」」


「OK。一人ずつそこ並べ。一発殴らせろ」


「朱香ちゃんの分は元貴に一発追加しよ」


「そうだな」


「「「ひょえ……」」」


 結局、朱香が鉄郎を煽り、妹に強烈なデコピンをお見舞いした鉄郎は、少々不機嫌なまま風呂に入り夕飯を食べる。

 まあ、夕飯の間に華澄が機嫌取りをし、食べ終わる頃には彼の機嫌は直っていた。


「ねぇねぇねぇ!! 皆で恋バナしよぉ!!」


 そして、暴走ガールはまだまだまだまだ止まらない。

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