第7話

「おい、猫なんかと遊んでる場合じゃないぞ。ハルマ。」

青い髪の青年が声を掛けた。

「この辺りに候補が落ちてきた可能性があるんだ。早く見つけるぞ。」

赤い髪の少年はフォル、いや私の喉をくすぐる。

私は盛大に喉を鳴らしてやった。

「わーってるよ。じゃあな。」

どうやら見逃してくれたようだ。物騒な話はしていたが、思うほど悪い人ではないのかもしれない。

彼らの姿が見えなくなると、私は池をそっと覗いてみた。

左右非対称のハチワレ模様背中は白から途中で茶色になっている。そして私が愛する青い瞳に、先だけが白いキャンドルテール。

正しくフォルそのものだ。フォルは私を助けるためにここに一緒に来てくれたのだろうか。

私の手首に鈴を残したのは、姿は見えなくてもそばにいる印なのかもしれない。

今なら普段の私よりも早く走れるはずだ。

私は誰もいない建物を音もなく通り抜け、広い庭を一目散に駆け抜けていった。

普段決して経験できないフォルの目線。周囲の景色が風のように過ぎ去ってゆく。

私は走って、走って、走り続けた。そしてやがて今までとは違う大きな扉にたどり着いた。

ここがゴールだろうか。他とは違い、重そうな鉄製の扉だ。

その時、首の鈴がチリンとなった。気がつけば私の目線がいつもの高さに戻っている。人の姿に戻っていた。

「ありがと、フォル」

私は手首の首輪と鈴を撫でながらお礼をいい、意を決して鉄の扉に手を掛けた。

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飛べない空 都城 文月 @yoshicollet

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