第3話
暗闇の中だ。
いつものように誰もいない。ただ違うのは、いつもなら何某かの建物の中のはずなのに、ここは何の建物もない。建物どころかただ暗闇が広がってるだけなのだ。
自分が立っているのが地面なのか、その一歩先がどうなっているのかも分からない。
「チリリン」鈴の音がした。聞き覚えのある音、その鈴の音は「チリリン、チリリン」と私を誘うように鳴っている。そして、「ニャー」聞き慣れた鳴き声。間違いなくフォルの鳴き声だ。
私はゆっくりと前に進んだ。鈴の音は少し離れては止まり、また少し離れては止まりを繰り返し、私と一定の距離を保って進んでいる。
私をどこへ誘っているのかはわからないけれど、少なくとも一人ではないことに僅かながら安心感を覚えていた。
「フォル?」声をかけると「ニャッ」と短い返事が返ってくる。
姿は見えないが、確かに近くにいるのだ。
しばらく歩くと何か四角いものが見えてきた。
それはドアだ。しかも見たことある。
私の部屋に入るドアだ。そしてドアの前にフォルが尻尾をユラユラ揺らしながら座っている。
ドアの前に辿り着くとフォルがいつも通りスリスリと体を擦り寄せてくる。
そしてドアに向かって「ニャー」とひと声鳴いた。
ドアを開けろとせがむときの顔だ。
私はゆっくりとドアノブを握りしめ回した。
そしてさらにゆっくりとドアを押した。
途端に真っ白な光が周辺を覆い尽し、私は目を開けていられなかった。
遠くで「チリリン」と鈴の音がしたような気がした。
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