第2話
朝が嫌いだ。
毎日眠る前に、明日目が醒めなければいいと思いながら布団に潜り込む。
それでも朝になれば、目はちゃんと醒めてしまう。
目覚めることが絶望なんて、どうして私の人生はこんなに苦しくなってしまったんだろう。
どこにいても、誰といても、何故だか孤独だった。
友達と他愛もない話で笑っていても、ここが自分の居場所とはどうしても感じられなかった。
それでもこんな気持ちに蓋をしてやり過ごす。
異分子だと気づかれたら、本当の孤独の始まりになってしまうから。
いっそのこと本当に孤独になってしまえば気が楽になるかもしれない。
そう思いながらもどこかで躊躇する自分がいる。
家族の中でも、学校でも、仕事を始めてからもこの孤独を埋める何かも誰かも見つからなかった。
一人部屋の中で、たくさんの本に囲まれてその中の一冊を開く時だけが唯一自分が満たされる時間と空間だった。
最近もう一つだけ、自分が少しだけ満たされるものを手に入れた。
一匹の猫だ。
何の気無しに覗いた保護猫の写真を見て、心が動いた。保護主に連絡すると、あっという間に里親に決まってしまった。名前は『フォル』。保護主が付けた名前をそのまま使った。飼い主が変わって混乱しているのに名前まで変えて余計に混乱させるのは可哀想な気がした。
猫用のベッドもあるのに、家に来たその日の夜、フォルがゴソゴソと私のベッドに上がりこむ音がした。初めての家で初めて会う人間のベッドでスヤスヤと眠る姿を見ておかしな猫だと思うと同時に孤独な心の中に小さい波紋をもたらした。
フォルは日を負うごとに近づいてきて、私のすぐ隣で眠るようになっていた。
孤独感が消えることはなかったが、そばにいるこの生き物を愛しいと思えるぐらいにはなっていた。
だから油断していたのだ。
あの夢がまた自分を呑み込んでしまうことはないような気になっていたのだ。
それは突然私を襲ってきた。
孤独なあの世界が再び。
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