ご臨終したかと思ったら転生してました

くーちゃん

第1話

よく生きているよな、もう何しても満たされない体になってるのに、と黒髪の童貞の20代前半の男は思う。仕事したってさ、結局、食べ物とか、ゲームしか楽しみねぇのに、何、こんな頑張ってんだか、ただのノルマだろ、毎日の。甘いもの食べたって、結局、消化されちゃってさ、それに女にも恵まれない、俺の人生終わってる。ははっと笑いながら、げんなりと海を眺める俺。全然人生楽しめなかったな、あぁ、こんな時期に海に飛び込むとかアホだろうけど、親にも探されねぇし、骨となるだけじゃん、早く覚悟決めて、飛び込めよ俺。あー、人生で一度くらいは女抱きたかったな……なぁ、何処かにいる神様、それくらい叶えさせてくれたって良くね? あ、あと、低音ボイスで白髪に生まれ変わらせてくれない? ま、どうせ、二度目の人生なんか来ないだろうけど、あー、よし、スマホのアカウントも消したな、さ、俺、さようなら。肩を慣らして、俺は冬の海に飛び込んだ。泳げないため、実質、沈んだら終わる。

苦しい……苦しい……助けて、やっぱりあんな辛くても生きるから……なんて思っても、もう遅い……ゴホッと息を吐いてから鼻に海水が流れ込み、全身に流れ始めて、沈み始めて俺は自我さえも失い、つまり、死んだ。

それが正解なはずだった。俺は何故か、息を吐いて、飛び起きる。

「かはっ!? は……?」

起きた瞬間には見知らぬ景色が広がっていて俺は何処かの居酒屋? 的な場所のテーブルに座っていた。それに俺の声はおかしい。死んだはずの声とは全く違う低音ボイスで目を見開いた。

「えー……っと」

ヤバイ、憧れの低音ボイスに胸が踊る。あれ、もしかして、これ白髪だったりするのか……と思い立ち、前髪を引っ張れば、黒くない。白い。瞳の色は分からないのは悔しいが、それ以外が分かった瞬間にガッツポーズをしていれば、一人の男がこちらへと寄って来て、俺は警戒して俯く。な、何、つか、俺より背が高い気がするし、ヤバイ、ここ何処かも分かんねぇ、え、すぐ詰むわけ? え、流石にそれは無理! 無理すぎる!! と震えていれば、俺の頭にその男の大きな手が乗る。

「何警戒してるんだ? 俺がいねぇ間にウザ絡みでもあったのか?」

うぉぉぉぉっ、何、俺、何処かの誰かに転生しちまったのかぁ!? しかも、めっちゃ低音イケボじゃん。顔を上げると右目に眼帯をしている為、更に俺の性癖に刺さる。しかも、ちょっとグレーめな髪色で赤い瞳、とても良い。服は見慣れないこちら特有の服っぽくて、上手く言葉に直して言えるような格好ではなかったが、これもまたいい。ただ言えるのは黒系だと言うこと。別に男が好きとか、そんなBLまがいな気持ちはないが、単に憧れだ。コスプレやそういうのにするとき、イケメンの眼帯キャラになりたかった、それだけだ。

「ウザ絡みに遭うわけがない、アハハ」

笑って誤魔化すが、彼の顔はあまり安心した様子ではないため、あれ? となるが、彼は頭から手を離し、「そうか」とだけ呟き、俺の前に座るので同じパーティー? とかそういうのだろうと付いて行く。

「というか、一瞬の内になんか雰囲気が変わった気がするが……気のせいだよな……」

と呟いているのが耳に流れてくれば、とても気が気じゃない冷や汗が流れ始めては彼はこちらを見て、ニコリと微笑む。

「やっぱり気のせいじゃないと思うんだよな……お前から俺を好きだと言うアピールが来ないし、隣に座ろうともしない、つまり、別人とかそういう感じに思える、違うか?」

ニコリと微笑みながら言われるので、こちらとしては顔を上げたくもなく、俯き、目は動揺の表れで泳ぐので、彼は溜め息を吐く。

「ジンくんさぁ、絶対ゲイじゃないよね」

「え……?」

「うわっ、絶対違う。否定してくれない時点で違う。えー、俺はこんなにジンくんが好きなのにどうしちゃったの?」

急に声色が変わり、オネエ声で絡まれるので、目を点にさせて驚くので更に彼は頬を膨らませて悲しがる。

「もうっ、ハッキリ言って頂戴、貴方は誰なの!?」

目を動揺させながら、ボソボソと俺は呟く。

「えーっと……俺はそのジンさんとは別で……乗り移っちゃった? 的な感じなので……ゲイじゃないし、そもそもそっち処女だし、童貞の男です……」

そうどうにか言い終われば、彼はとある言葉に対して反応してしまう。

「え、処女……? ジンくんの処女、頂けちゃうの? じゃあ……今からでも……」

急に俺の隣に彼は座りだし、俺の太腿を触りだすためにヒィィィ!! と心の中で絶叫しながら、彼の手を退けようと試みようとしたとき、誰かが彼の手を退けた。

「嫌がってるのに無理にするのは良くないですよ、ランクさん」

「ちょっ、おじさんの手で触らないでって言ってるのに本当、ボディタッチ好きよね」

「おじさんなのは貴方だったはずでは?」

ぷくっとまた頬を膨らませては彼は席を立ち、先程座った俺の前の席に座り直しては、助けてくれた男性は俺の隣へと座る。それと、あのオネエはランクと言うのだなと覚えた。

「あ、中身違うのなら自己紹介しなきゃね、私はランク。で、こっちのおじさんは─」

「エネルです、どうやら雰囲気が違うので嫌な予感がして、戻った次第です」

「は、初めまして……」

オネエ口調でこちらを見つめるランクの視線はとても痛い。見た目はとても良いのに、とても残念だと俺は思った。一方、エネルは茶髪でオレンジの瞳、髪を緑色の紐で少し結っている感じで優しいオーラが出ている。紐より濃い緑系の服を着ていて、尚、人当たりの良さそうな人に見える。

「あの……聞きたかったんですけど、俺の目の色って何色ですか……?」

「ん? えーっと……私と同じ赤色よ♡」

「あ……」

嬉しいのに貴方と同じにされると複雑なんですよ!! 目線を逸らして、どんな反応をしたらいいのか分からず、苦笑気味になる。

「そう言えば、ジンくん童貞なんでしょ? 女の子に興味があるの〜? 男にしなよ」

「い、いやぁ……」

「お前ら何をしているんだ……」

急にまたランクさんが俺の手を掴み、ニコニコとそう口にしてきて、とてつもなくドン引きをしていれば、俺の目の前に女性が現れて、しかも、胸が大きくて、大人っぽくて俺は顔が赤くなり始める。

「何だ……ジン、どうかしたか?」

俺の反応に困惑しているようで、首を傾げてこちらを見るので、俺は胸に視線が行かないように視線を逸らす。

「ジンくん、別人になっちゃったから、私のこと興味なくなっちゃったのよ」

「ほう……で、お前は誰なんだ?」

ランクの隣に彼女は座り、俺にそう尋ねてくるので、童貞の緊張感で、恐る恐る口にする。

「俺はその……ジンさんとは別人で、童貞なので……女の人と話すの得意じゃないです……」

目を瞑りながら、そう口にしてはチラリと彼女を見る。彼女はベージュのような髪色で紫の瞳をしてストレートロング髪。艶のある髪が俺の視線を釘付けにする。服装は胸が強調されるような感じで、よくは見ていなかったため不確かだが、スカートは短かった。そして、肩は露出している。もはや、王道のヒロイン像ではないらしい。大人のお姉さんヒロインらしい……俺には到底キツイ。童貞じゃなければな……と後悔してしまうほどに。彼女はクスクスと笑いながら、席を立ち、俺の隣に近寄り、これでもかと胸を押し当ててくる。

「え!?」

「うわぁ、本当にお前、童貞なんだな、どうだ、柔らかいか?」

「……い、幾ら何でも童貞には!? ……え、えっと……や、柔らかいです……」

答えまいとしていたが、彼女の視線が怖すぎては口にしたが、いい匂いです、までは言わなかった、他の感想を言うとなると話が違うと殺されると思ったからだ。彼女は胸を押し当てるのをすぐにやめては俺の頬に指先をツンとする。

「私はアリアだ、宜しくな、童貞のジン」

「童貞は余計なんですが……」

「じゃあ……DTのジンくんかしら」

「貴方には言ってないです」

咄嗟に割り込む、ランクには冷たい感じの返しをするので、ランクは「ひどぉい」と目をパチパチしながら訴えかけてくるので、流石に俺はウザいと思える程になった。

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