3.オリジナリティは奈辺にあるのか?
先日カクヨムコン9に合わせて公開した拙作『虚空の彼方へ』ですが、時々「オリジナリティがある」といったコメントをいただいております。
ありがとうございます。お引き立て感謝です。
そう思っていただけたならしめたもの。なのですが。
私はこれにオリジナリティがあるとはあんまり思っていないので、ちょっとこそばゆい気持ちになってしまうのです。
もちろん、そう思っていただけることを否定したいわけじゃないのですけども。
というわけで、本日は「オリジナリティは奈辺にあるのか?」あるいは「オリジナリティってなんじゃい」という話をば。
白状しておくと、拙作『虚空の彼方へ』の根底にあるのは、上橋菜穂子や荻原規子(敬称略)の作品だと思うし、ラストシーンのイメージは萩尾望都や竹宮恵子のSFだと思うし、思わせぶりな単語だけ出して行間を読ませるやり方は『エヴァンゲリオン』の影響だと思うし……。
萩尾望都は別に世代ではないんですが、母親が持っていたので気付いたら読んでました。
竹宮恵子は、2007年に『
エヴァはね……影響を受けたというか、食べちゃったので。むっしゃむっしゃと。いや、むしろ私が捕食された? 私はエヴァのコアの中で夢を見ているだけなのかもしれません。これがエヴァの呪い……!(何言ってんだコイツ)
ついでに言っておくと、『桜華堂で待ってる』は村山早紀の作品や『夏目友人帳』(緑川ゆき/白泉社)の影響が強いなあと思ってるし、『蒼天の風 祈りの剣』は『デルフィニア戦記』(茅田砂胡/中公文庫)の影響受けてんなあと思っています。
ついでのついでに言っておくと、『蒼天』の主人公エディリーンは、十代の頃に書いた元の話では、もっと暗ーい、影を背負った子だったんですが、書き直すに当たって、「暗すぎる子はもうやめよう」と思って方向転換したらこうなった感じです。
はい、どんどん本題から逸れていくー!
ええと、つまりですね。人類が物語というものを発明して幾星霜。我々は皆、これまで読んだ何かしらの物語の影響を受けているわけで、完全なオリジナルなどもはや存在しないんじゃないかと思うわけです。
それでも、色々なものを読んで、見て、自分に足りないものを自覚し、それでも自分にしか書けないものがあると信じて追及した先に、自分だけの「オリジナル」が生まれるのじゃないかなあ、とか思うのです。影響は受けてるけどパクリじゃない、と言い切れる言い切れる何かが、そこにあるはずです。
時々、「本なんて読みたくない。勉強したくない」なんて言っている物書きさんも見かけますが、何も土台がないところに作ったものは、「ぼくがかんがえたさいきょうのほにゃらら」にしかならないと思うのです。井の中の蛙というか。
で、です。
どれだけ世界の設定にオリジナリティを詰め込んでも、そんなものは全て、語りたい物語のための舞台装置にすぎないんじゃないかと思うのです。
異世界転生ものはとっくに飽和して、どんなユニークなスキルを付与してもらうかの大喜利みたいになっているように思います。パーティ追放ものなんかもそうですね。一見役に立たないスキルでどう成り上がるか。そこにばかり腐心していると、肝心なことを見失ってしまうのではないか。
肝心なことは、それによってどんな物語を語りたいのか、ということだと思うのです。
物語にはテーマがあるはずです。「少年ジャンプ」に掲載されている漫画のテーマが「努力、友情、勝利」と言われるように。プリキュアや戦隊ヒーローが毎年交代しても、正義や友情や仲間を謳っているように。
もちろん、そんな高尚なテーマなんていらねえ、何も考えず気楽に作品を楽しみたい、というのもあるでしょう。
でも、書こうとするからには、書きたい物語、テーマがあるはずだと思うんです。
何に突き動かされて、創作をやろうと思ったのか。描きたい物語は何なのか。
それをないがしろにして、「俺が考えたユニークなスキルだぜ!」とかやっても、あまり意味はないかなあ、なんて思う今日この頃です。
まあ、程度問題ですけどね。特にハイファンタジーなどは、語られていない裏設定など、たくさんある作者さんも多いと思います。その設定が物語を面白くする要素たり得るのか、世界観を深めて読者の想像力を刺激する要素になるのか、そしてどのようにそれを表に出すのかが、作者の技量であり、物語の面白さかなあ、と思うのです。
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