第6話 初恋の人は逢えば40年ぶり
手元には中学時代の名簿が渡され、現住所と電話番号と旧姓が書かれてある。
しかし中には亡くなった者も居て、享年何才と書かれてある。年月の長さを感じた。
暫く名簿に目を通していたがザっと見ただけで自分の自己紹介の番が廻って来た。
「みんな! 本当に久し振り。森田真人元気に帰って参りましたぁ。覚えているかい。
四十年ぶりですが、よろしく!」
お~~と一斉に歓声があがった。どうやら名前だけは覚えていてくれたらしい。
「よ~真人! お前か誰か分かんなかったよ。元気そうじゃないか」
そんな声が数人からあがった。この年になって、お前と呼ばれるのは何年ぶりだろう。
それも不思議と嬉しいものだ。ここには上下社会は存在しない。みんな同じ立場で遠慮
なく話せるし敬語も要らない。
私は嬉しかった。実家は無くなっても同級生達には忘れられていなかったようだ。
それから、それぞれ気の合った者同士が輪になり、酒を注ぎ昔話に花を咲かせた。
名簿と名前を見合わせて少しずつ昔の記憶と、顔の面影が噛み合って行く。
(ああ同窓会っていいものだなぁ)少年時代に戻った気分だ。
そんな中でやはり留美の事が気になった。花岡留美はこの会場に居るのだろうか。結婚して確か女の子が二人居ると聞いたことがある。それを察したかのように誰かが言った。
「真人と留美は仲が良かったな。俺たちはみんな、お前達は将来結婚すると思っていたんだ。お前が東京に行ってから留美の奴、可哀想なくらい落ち込んでいたんだぜ」
「えっ、本当かよ。彼女とは駅で別れてから四十年間、音信不通なんだが」
「真人、お前も冷たい奴だなぁ。控えめな留美の心が分からなかったのか。彼女は、お前が東京に出てから、時々駅のホームを眺めていたんだ。どれだけお前に心を寄せていたのか、健気な留美はお前の住所も分からなくなり手紙も書けず、お前からの連絡を待っていたんだぞ」
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