第2話 これまでの生い立ち

いま思えば故郷のことなんか考える余裕はなかった。故郷を離れて二年、私が二十才の時に父は病で倒れあっさりとこの世を去った。残されたのは三才年下の妹と母のみ。東京の大学に通っていたが、父が亡くなり自分が家族を支えなければならない。

大黒柱を失った我が家、母には大学を辞めて働くと言ったのだが、母は折角入った大学を中途退学したら、お父さんが悲しむからと大学だけは卒業しなさいと、母が勤めに出た。そんな母の気持ちを受け止め、学校に通いながらアルバイトを始めた。妹もアルバイトをして、なんとか無事に大学は卒業することが出来た。

 時は経済成長期で条件の良い会社に入ることも出来て、妹も無事に大学を卒業した頃、私は職場結婚したが父の死を除けば、まるでベルトコンベアーに乗った人生のようだった。

就職、結婚、昇進、子供が生まれ気がついたら母は他界、妹も結婚して子供がいる。

母が他界したほかは特に悪い事もなく、大した刺激もなく平凡な人生が過ぎて行った。妻も優しく子供達も、これといった問題もなく育ってくれた。そして定年が近づいた頃には部長までになったが、それ以上の出世は遠く、それどころか最近は第一線からも外れ、名前だけの役職で会社に居る。


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