初恋の人
西山鷹志
第1話 同窓会
初恋の人
私は若い男性社員数人に問うたことがある。
「君たちは結婚するとしたらどんな相手を選ぶ」
「それは勿論、美人がいいんじゃないですか」
「確かに美人も良いけどそれだけでは駄目だ。やっぱり優しくないと」
「俺は容姿端麗それに尽きますよ」
「僕は美人じゃなくても、しとやかであればいい」
色んな答えが返って来た。当然と言えば当然の答えであろう。それを思い出していた。
それなら自分はどんな相手を好きになり恋をしたか、そして最終的にどんな相手と結婚したか。世の中そうそう理想通りの相手と結婚できるかは難しい、多少の妥協がないと……
当時を思うとあの初恋の人は理想の女性だったのか。いま思うと定かではない。恋は盲目とも言う。恋に夢中になり彼女は世界一女いい女と思い込んでいたかも知れない。しかしそれでも初恋は生まれて初めて好きになる人であり、二度と経験できない恋という財産かも知れない。
あれから四十年の月日が流れただろうか。今でも皆の笑え声が聞こえてくるようだ。
在校生が唄う。仰げば遠とし、の歌声に見送られて高校を卒業した。当時は卒業式の定番だったが昨今は卒業ソングランキングで二十三位ともはや忘れ去られている。これも時代の流れか?
父の仕事の関係で私は高校卒業と同時に故郷を去り東京に行くことに。私には当時恋人がいた。しかし卒業と同時に離れ離れの運命になった。初恋の人、花岡留美の笑顔を心に刻みながら、生まれ育った故郷に別れを告げなければならなかった。
留美と別れる時は本当に辛かった。そんな苦い青春の一ページが蘇る。
私はいつになく会社のデスクに向かって、そんな事を思い浮かべていた。
ぼつぼつ定年も視野に入れながら、将来の事について考えるようになり子供達も独立した今、定年後は沖縄か故郷に住み第二の人生を考え始めていた。
そんな時、中学時代の級友から同窓会の招待状届いた。仕事に追われて五年ごとに開かれていた同窓会は全て欠席していたが、今回はなんとしても出席したい気持ちが強く出席に○を付けて返信した。
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