第47話 恋人とクリスマス
「クリスマスまであと一時間……だね」
「あぁ……」
ベッドライト以外の電気を消した部屋で、ベッドに上がって隣り合わせに座り、俺と真琴は少し緊張感のある声で話し始めた。
「架くん……クリスマスになったらキス、するんだよね?」
「……そうだ、心の準備はできてるか?」
このタイミングでその確認を取ってきたということは、もしかしたら真琴は心の準備ができていないのかもしれないと思いそう聞いた俺だったが、真琴は力強く頷いて言った。
「うん、できてるよ……その先は、どうしよっか?」
なるほど……今キスの確認をしてきたのは、キスじゃなくてその先が本題だったということか。
その先……さっきお風呂で────
「真琴の体を初めて見るなら、それはお風呂場とかじゃなくて、然るべき場所で然るべき時に見たいんだ」
「っ……!」
俺がそう伝えると、真琴は頬を赤く染めて俺から視線を逸らして言った。
「そう……いうことなんだね、それって……ベッドの、上?」
「そういうことだ……悪いな、どうでもいいことかもしれないが、やっぱり二人の思い出は丁寧に作っていきたいんだ」
という会話をしたから、きっとそのことを言っているんだろう。
あの時はいつするのか、ということについては言及していなかった。
俺の意見は当然決まっているが、このことに関しては真琴の意見を先に聞いておきたいな。
「先に真琴の意見を聞きたい、真琴はどうしたいと思ってるんだ?それがどんなものであれ、俺は真琴の意見を尊重する」
俺がそう言うと、真琴は優しく俺に微笑みかけて言った。
「架くんは、やっぱり優しいね」
「当たり前のことだ」
俺がそう答えると、真琴はまた微笑んでから頬を赤く染めて言った。
「私は……したい、架くんのことを、もっと深く愛してあげたい……架くんは、どう?」
真琴がそう思ってくれているのなら……俺は、もともと自分の中にあった意見を真琴に伝える。
「……俺も、真琴のことをもっと深く愛したいと思ってたから、したい」
そう伝えると、真琴は嬉しそうに頬を赤く染めて言った。
「じゃあ……しよ?」
「あぁ……しよう」
互いに、深く愛する約束をした────その十分後。
俺と真琴は手を重ねた。
「……早く、クリスマスになっちゃえばいいのに」
「……あぁ、早くなって欲しいな」
────二十分後。
手を重ね合わせていた俺と真琴は、今度は恋人繋ぎで手を繋いだ。
「あと四十分も、私我慢できるかな?」
「ここまで来て我慢できなかったなんてオチは勘弁してくれ」
「架くんとの思い出のためだもんね……頑張って我慢する」
「……俺も、精一杯我慢する」
────三十分後。
恋人繋ぎをしていた俺と真琴は、その手を離すと今度は互いのことを抱きしめ合った。
「……真琴の鼓動が俺に伝わってくる」
「早いでしょ?ドキドキしてるからね……」
「それなら、俺だって早いだろ?」
「うん、とっても……」
────四十分後。
俺と真琴は、抱きしめ合いながら互いの頬にキスをし合う。
「架くん……大好き」
「真琴……俺も、大好きだ」
────五十分後。
俺と真琴は抱きしめ合うのと頬にキスし合うのをやめて、互いのことを見つめ合った。
「架くん、大好き」
「大好きだ、真琴……って、さっきからそれしか言ってないな、俺たち」
「仕方ないよ……こんなに、大好きなんだから」
「……そうだな」
────五十九分後。
クリスマスになるまであと一分となったところで、俺と真琴は互いに抱きしめ合って、顔を向かい合わせた。
真琴は頬を赤く染めて、俺に向けられる目にはとても愛情が込められている……きっと、俺も今真琴に対してそれと似たような表情をしているんだろう。
俺たちはその一分の間、ただただ互いの顔だけを見つめ合い────クリスマスになると同時に、互いの唇を重ね合わせた。
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